「…口説き落とせたんですか、と。」
面白そうだと言わんばかりに、レノはニヤニヤしながらツォンの後ろにいた。
「主任は相変わらず強引ですねぇ…」
「互いのためになるだろう。」
顔色を変えず、カタカタとパスワードを打ち込み膨大なミッドガルの住民データを読み込んだ。
「レノ。午後の任務はどうなってる?あと報告書が溜まっているぞ。」
「あ〜…あっと、そうでした。それでは午後の任務も行ってきます、と。」
ヒラヒラと手を振りレノは出て行った。
ツォンは笑いを含んだため息をつき、画面にでた一人の少女のデータを見た。
ミカル・セルブライト
誕生日ーーー
本籍ーーー
現住所 ミッドガルーーー
家族構成ーー
一通りのデータを見る。
現住所はミッドガルだが、本籍はコスモキャニオンとなっていた。
家族構成を見ると、叔母との二人暮らしとなっているが
数ヶ月前にその叔母はコスモキャニオンにて没となっている。
どうやら、この叔母の出生地がコスモキャニオンらしい。
両親に関してのデータが一切載っていないところを見ると
恐らく何らかの事情で離れて、叔母との2人暮らしだったのだろう。
家の詳細をクリックすると、ミッドガルでも高級住宅地の部類に入る区画に一軒家を構えていることがわかった。
ツォンは気になり、彼女の叔母のデータも読み込んだ。
そこに映し出された本人の画像は、美しいブロンドをショートヘアにした、目が印象的な女性だった。
凛とした雰囲気。
見た目もさることながら、その経歴にもツォンは驚きを隠せなかった。
神羅カンパニーが私設軍隊エリート兵であるソルジャーの制度を作った際に、ある特殊部隊のチームを吸収した。
まだツォンがタークスに入る前の話だったので、書類でしかその情報を見たことはなかったが
その特殊部隊は、ソルジャークラスファーストの者でさえ入隊することは非常に難しいと思える条件が揃えられていた。
ミカルの叔母は、この特殊部隊のチームリーダとして第一線で活躍していたことが記されている。
若くしてトップクラスに入り、エリート兵達を何年も統率してたようだった。
しかし、神羅カンパニーに吸収されて3ヶ月で退社をしている。
かつて、英雄と崇められていたあのソルジャーと同じか…それ以上かもしれない。
それが、男ではなく女だというから驚きを隠せない。
データを見る限り、任務遂行は不可能に近いようなミッションを全てこなしていた。
ミカルと血縁者とは想像し難い。
それくらい真逆な見た目をしていた。
この叔母が数ヶ月前に居なくなってるところをみると
この、少女は一人で住んでいるのだろうか。
いくつかの疑問は残ったが
ツォンはパソコンの電源を切り、午後の任務へと向かった。