鳴門 | ナノ
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73.


「この木ならまだ使えるんじゃないか?」
「うん。だな」
「……しかし、歴代火影達の築いてきたものが全て破壊されちまったな。まさかこんなことになっちまうとはな」
「火影達の遺産はこの里だけじゃないだろ」

失ったものは多くそして大きいが、だからと言って全てがゼロになったわけじゃない。

「俺達が残ってる」

ベスト越しに触れたのはちょうど心臓の辺り。そのままそっと目蓋を下ろすと一定のリズムで刻まれる鼓動が手の平へと伝わってくる。なまえがもう一度与えてくれたものだ。あの時、胸を襲った激痛と視界を埋め尽くす赤に覚悟を決めた俺をあの世から呼び戻してくれたのだ。

「もう動いても平気なのか?」
「ライドウか。無茶さえしなければ平気だってよ、シズネのお墨つきだ」
「そうか……」

大きく抉れたはずの胸には薄い傷が一閃残っただけだった。時折微かな痛みを訴えてくるが、一度は死ぬほどの傷だったことを考えれば当然だろう。

「なあ、ゲンマ。俺はなまえにひどいことを……」
「あいつならちゃんと分かってるさ。そんなことより今は里の復興を一番に考えようぜ?」

後になってライドウが教えてくれたのだ。なまえは"繋ぎの力"を使いフラフラになりながらもペインの術から俺達を守ってくれたのだと。自分だけ逃げることだって出来ただろうにあいつは俺達を守るために危険を顧みず残ってくれたのだ。そこまでしてくれたのだから、俺達がいつまでもクヨクヨているわけにもいかないだろう。行ってらっしゃい、とも言ったことだしあいつが帰ってきた時に里がこんな有り様ではきっと悲しむだろうから。出来ることならなまえにはいつも笑っていて欲しいし、何より俺自身が胸を張って迎えたいから。

(なあ、そうだろう? なまえ───)







「マダラよりも先に会えたのは運が良かった。なまえ」
「! 小南さん……」
「ペイン……いいえ、長門が命懸けでナルトに夢を託した以上私ももう暁に戻る気はない。でもその前にあなたに会っておきたかった」

木ノ葉を離れたところまでは良かったものの、チャクラ切れの気怠い体では暁に戻るのは厳しそうだと考えていたところに現れた小南さんが私の目をまっすぐに見つめながら告げた。
長門さんと直接顔を合わせたことはなかったけれど、ペインさんを通した言葉が彼のものだったならどう言う人だったかは多少なりとも知っているつもりだ。心から争いのない世界を望み、文字通り命を懸けた人。自らの手で叶えたかっただろうに、託されたナルトを憎むわけじゃないけれど心のどこかでモヤが残ってしまうのはどうしてだろう。

「私にとっては弥彦と長門が全てだった。二人の夢がナルトに託されたならこれからはあいつが二人の夢になる。長門が信じたなら私も信じ、私達雨隠れはナルトと共に二人の夢を追いかけることにしようと思う。今度こそ散ることのない希望の花であって欲しいから」
「……小南さんがそれを望むなら。でも、私には私の夢があります」

私の夢はきっとこの人達の希望の花を摘み取ることになる。それでも例え恨まれようともここまで来て立ち止まるわけにはいかないのだ。そのために暁に入り、マダラさんの側にいるのだから。

「分かってる。どんな夢だろうと私にお前を否定する権利はない。でも、長門の想いだけは忘れてくれるな」
「長門さんの?」
「最後までお前の身を案じていた。結局私達にはお前を理解してやることが出来なかったが、ナルトなら……」
「ナルト?」
「きっとこれで最後になる。何て言ったら良いか分からないけど、あなたに会えて良かった。長門も同じ気持ちよ」
「……、私の方こそお二人に会えて良かった」

また一つ、大切な繋がりに別れを告げた。

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