鳴門 | ナノ
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46.


一本の糸を見た。不安定に靡く見るからに脆い糸だ。それはなまえの姿がカラスの大群を伴って消える寸前、ピンッと突っ張ったかと思うとやがてプツリと切れた。傀儡を操るチャクラ糸のようにも見えたが、どこか異なるそれの正体が分かったのはなまえや暁の奴が去り、サクラが診断を下すべく我愛羅に触れた時だった。

「我愛羅」
「ナルト、これは?」
「お前を助けるために皆走って来たんだってばよ」

尾獣を抜かれたはずの我愛羅が自ら目を開けた。確かに死んでいたはずなのに、今は大勢の砂の忍に囲まれながらナルトと言葉を交わしている。

「世話かけやがって!」
「全くだ。心配かけやがる弟じゃんよ」
「何だお前等、偉そーに! 我愛羅は風影なんだぞ。生意気な口利いてんな! この下っ端共!」

我愛羅、気分はどうだ? と気遣うテマリさんに答えるように我愛羅くんは立ち上がろうとしたが、さっきまで死んでいたのだ。全身の硬直がまだ完全には解けていないのだろう。

「我愛羅、そのままで良いから聞きたいことがある」
「! チヨバア様?」
「お前は尾獣を抜かれ確かに死んだはずじゃった。なのに、なぜ生きておる?」
「……夢を見ていた」
「夢?」
「ああ。遠いところに行こうとしていた俺の体に巻きつけられた糸が反対側に引っ張るんだ。誰かが必死に引き続けているのに、肝心の顔が見えない。だがあのチャクラはかつて───」

なまえから受けたものと似ているような気がした───と。確かめる術はない。だが、徐に持ち上げた自身の手の平を見つめ握り締めた我愛羅くんは確信しているようにさえ感じられた。

「そうか、そう言うことか」
「チヨバア様、何か分かって……」
「……っ、そんなことより一刻も早く里に戻りましょう! 砂の里に戻れば私が解毒薬を作ります。やるべきことも、今の話だってその後からでも」
「いや、その必要はない」
「どうして! すぐにでもサソリの毒を取り除かないと!」
「そうではないんじゃよ」
「……え?」
「あの娘の言う通り、どうやらワシの目は気づかぬ内に曇っておったようじゃ。今になってようやくあの言葉の意味が分かったわい」

やるべきことも取られてしもうた、と残念がる割には晴れやかな表情を浮かべるチヨバア様の言葉をきっかけにしてバラバラだったはずのパズルのピースが次々とあるべき場所にはまっていくようだった。
なまえはあの時チヨバア様を嘲笑うのではなく止めるためにあんな言葉を吐き捨てたのだ。真意を憎まれ口に隠して。我愛羅は自分が助けるからあなたが犠牲になることなんてないのだと。あの糸がその役割を担っていたのだろう。

「もしかするとあの娘は……フッ、この世はとうの昔に見限られたものだと思っていたんじゃがのう」
「チヨバア様?」
「いや。あくまでもしもの話を口にすべきじゃないだろう。それに我愛羅もこうして目を覚ましたのじゃ、今はそれだけで十分じゃろうて」
「?」
「さて、さっさとに里に帰るとするかの!」

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