鳴門 | ナノ
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25.


「あの子の兄貴も忍だから暗部について全く知らないってわけじゃないだろうし、つきっきりで教えて欲しいとまでは言わないよ。時間がある時に軽く見てくれればそれで良いから。何せ要領は良いし、センスだって悪くないからちょっとコツを教えてやるなりすれば後は勝手に成長してくれるよ」
「……やけに気にかけているみたいですね? その子のこと」
「少なくともお前が考えているようなことはない普通の女の子だよ。ま! 四代目の術を使える点を除けばだけど」

結局は根負けし、カカシ先輩の頼みを聞き入れた僕は先輩と一緒に木ノ葉病院の前で例の教え子を待つことにした。

「おーい、なまえ! こっち、こっち」

修行の話を持ちかけられたのは今から三日前のこと。そして、今日初めて出会ったその子は先輩の言った通りいかにも普通の子どもだった。家庭事情(念のため、密かに調べさせてもらった)は多少なりとも複雑な面もあったみたいだが、暗いものを腹に抱えるほどじゃない。一緒に暮らす義兄との仲も良好。少なくとも執拗な警戒を抱く必要がないくらいにはありふれた普通の子どもだ。

「こいつは俺の後輩のテンゾウ。忙しい身だからつきっきりの修行は難しいが、腕は確かだよ」
「テンゾウさん? 不知火なまえです。よろしくお願いします!」
「……ああ、よろしく」





こちらの素性を明かす訳にも行かず、名前だけを告げ握手を交わしたのが今から凡そ一週間前のこと。
現時点でこの子が水とは無縁の場所で水遁の術を主戦力にすることは難しく、なまえとの修行はそこをどうやって補って行くかが主だった。つまり、鍛えること以前にアイデアの出し合いと言うわけだ。

「やっぱり扱える水の絶対量をいかにして増やすかを考えるべきだね。新しい術を体得するにも今の君にはあまりにも時間が足りない」
「うーん。大量の水を持ち運べたら一番手っ取り早いんですけど、かと言って樽を抱えて闘うわけには行かないし……」
「! それだ。それだよ! なまえ!」
「?」
「もちろん限度はあるが、水を持ち運ぶことは出来なくもない。なまえは口寄せの術については?」
「口寄せ? あの動物を呼び寄せる?」
「確かに口寄せの術では契約を結んだ生き物を呼び出すことが多いが、中には忍具を呼び寄せる術式も存在するんだ。巻物の中にあらかじめ水を閉じ込めておいて、必要に応じてそれを呼び出す。巻物なら何本かストックしておけるし、生き物を呼び出すよりは遥かに会得しやすいからね」

加えて、元はこちらの世界にあったものを閉じ込めるわけだから特殊な契約を結ぶ必要もない。時間が限られている今のなまえには持って来いの案なのだ。

「問題は、それを闘いの中でちゃんと使えるか。呼び出す瞬間にはどうしたって隙が生じてしまうからそこをいかにしてカバーするかが課題になってくる」

とは言っても、この子は四代目の空間忍術が使えるらしいから闘いの中で仕掛けのタイミングを図ることにはある程度慣れているのだろうけれど。

「ここからは実戦の中でタイミングを図る修行に切り替えて行こう。ストックの作り方も教えておくから、僕が見られない時はそちらの練習もしておくようにね」
「はい!」

始めは気乗りしていなかったはずなのに、気がつけばこの子との修行に少なからず楽しさを見出している自分がいた。着実に力をつけていくなまえの成長を間近で見るのはやはり楽しい。

「じゃあ、早速始めよう」
「はい! お願いします。テンゾウさん!」

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