鳴門 | ナノ
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22.


ここまでの試験を終えて7チーム・22名と、例年よりもずいぶんと多くの受験生が残っていた。本来ならこの時点で1ケタまで減っていることを前提にプログラムが組まれているはずなんだが、残った受験生の大半が新人であることも含めて今年の中忍選抜試験は驚かされることが多い。

「えー、皆さんには今から第三の試験の本選への出場を懸けた予選を行ってもらいます」
「予選って……どう言うことだよ!」
「その予選って、意味が分からないんですけど……何で今残っている受験生で次の試験をやらないんですか?」
「今回はここまでの試験が甘かったせいか少々人数が残り過ぎてしまいまして───中忍試験の規定に則って予選を行い、第三の試験の進出者を減らす必要があるのです」

第三の試験には各国の大名が招待されるため、試合の時間も限られている。多少の誤差は許容範囲の内だが、少なくとも7チームの試合を行っている時間はない。受験生からすればたった今から予選だなんて堪ったもんじゃないだろうが、こればっかりはどうしようもない。そうと割り切りつつも、心のどこかに同情心が残っているのはその中になまえもいるからだろうか。

「予選は一対一、実戦形式の対戦とさせていただきます。ルールは一切ありません。どちらか一方が戦闘不能になるか、負けを認めるまで戦ってもらいます。ただし、勝負がはっきりついたと判断した場合は無暗に死体を増やしたくはないので止めに入ります」

ガガガ、と何かが引っかかったような音を立てながら大きな電光掲示板が姿を現した。あれがここにいる奴等の命運を握るわけだが、果たしてなまえは誰と当たるのか。あいつの性格を考えれば班の奴等と当たるよりは他の奴等、それこそ他里の奴と当たった方がやりやすいのかもしれない。

「───では、早速ですが第一回戦を始めます。掲示板に表示された赤胴ヨロイ、うちはサスケは前へ。後の皆さんは上に移動してください」

上忍師と班の奴等が合流しながら移動を始める中、なまえが擦れ違い様にあからさまに歩調を緩めた。

「……来てたんだね」
「まあ、いつまでも周りに頼むのも気が引けるしな。そう言うことだから、なまえ……」
「?」
「"おかえり"も"ただいま"も、今はまだなしだ。さっさと本選の進出を決めてこい。それまで待っててやるから」
「! うん。約束するよ、絶対」
「フン。ほら、あいつ等が待っているぞ。行ってやれ」

刹那、肩に乗せた手が離れたかと思えば仲間の元へと駆けて行くなまえの後ろ姿を見送った。





─────……言葉を交わしたのは第一回戦が始まる前、それっ切りだ。
本選の出場者が続々と決まっていく中、なまえの名前が掲示板に表示されたのは八回戦目のことだった。相手は薬師カブトと言ったか、クナイや手裏剣を上手く囮に使ってくる辺り、なかなかに手強い。ああ言ったタイプは教科書から学べるような基本忍術は通用しないだろう。そうなると飛雷神の術に頼らざるを得ないわけだが、なまえのそれはオリジナルと違ってバリバリの後方支援型。つまり一対一の戦いには向かない。

「死の森での術がこう言った場面に向かないのは君もよく分かってるんだろ? 悪いことは言わないから、棄権した方が良い」
「そんな優しさなんてありがた迷惑も良いところですよ。それにここまで来て半端な負け方をするなんて悔しいじゃないですか。だから……勝たせてもらいますよ!」
「……へえ…」

乱れた呼吸を強引に抑え込むように大きく息を吐き出し、千本を口の端で咥えた姿に強い既視感を覚えた。それは俺だけじゃなかったらしく、カカシさんを始め何人もの視線を感じる。嗚呼、言われなくても分かっている。あそこにいるのは俺だ。

「何の真似だい? それ」
「さあ? 受けてみれば分かりますよ」

空いた手に握っているのは煙玉だろうか。そして、両端に小振りのクナイが結びつけられたワイヤー。

「!」

力任せに地面に叩きつけられた煙玉が破裂し、辺り一面が白く染まった。眼下から頻りに響いてくるのはクナイがぶつかり合う音だろうか。

「こんなことをしたって無駄って言うのが…!」
「無駄じゃない」

さっきから繰り返し聞こえていたものと比べて一際高い音の正体は千本か。煙幕の切れ間からクルクルと回転しながら上って行くそれを辛うじて見つけることが出来た。

「影分身の術!」

それは僅か数秒の出来事だった。
回転しながら尚も滞空する千本を歯で捕らえたなまえが三人に増え、さっきのワイヤーを受け取った両隣の二人が交差しながら眼下に広がる煙幕の中へと飛び込んで行った。そして、一拍ほど遅れて残された一人がクナイを構えて後に続く。

「! うぐっ…」

次第に煙幕が晴れて来る中で聞こえた呻き声は、確かに勝負の決着を知らせていた。
体を拘束するワイヤーは地面に深々と刺さったクナイによってガッチリと縫い止められ、倒れた背中に伸し掛かるなまえが握るクナイは首筋に突きつけられていた。こうなってしまえば、ハヤテも止めざるを得ないだろう。

「勝負ありですね……これ以上の試合は私が止めます。よって第八回戦の勝者・不知火なまえ、予選通過です!」
「やったってばよー!」
「すごい! なまえ、格好良かったわよー!」
「ははっ……、」
「文字通り満身創痍だな。お前」
「! ゲンマ……」

手前に傾いた瞬間、すかさず脇に差し込んだ片手で受け止めた体にはほとんど力が入っていなかった。それもそうか、飛雷神の術も影分身の術もどちらも大量のチャクラを消費するのだから。ましてや第二の試験が終わって間もないのだ。バテるもの無理はない。

「まあ、とりあえずはよくやったな。上まで運んでやるから少し寝てて良いぞ?」
「うん。でも、その前に───ただいま。ゲンマ」
「! ああ。おかえり、なまえ」

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