鳴門 | ナノ
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16.


「そうか。サクラも来たか」
「! カカシ先生」
「これで正式に中忍試験に申込が出来るな」
「どう言うこと?」
「実のところ、中忍試験は里に登録された正式な班でしか受験出来ないことになっている」
「でも、受験するかしないかは個人の自由だって……嘘をついていたの?」
「もし、それを言ったらなまえはともかくサスケやナルトは無理にでもお前を誘うだろう。例え志願する意思がなくてもサスケに言われればお前はいい加減な気持ちで試験を受けようとする。3人のためにもってな」
「じゃあ、もし私がいなくて3人だけで来ていたら?」
「ここで受験は中止にした。この先へ行かせる気もなかった。だが、お前達は自分の意思でここへ来た。俺の自慢のチームだ!」

ハハハ……、とサクラが乾いた笑いと共に私を見遣る。だから言ったでしょう? カカシ先生は私達のことをちゃんと見ているし、信じてくれているんだって。

「あ、それとなまえ。お兄さんから伝言」
「?」
「『お前なりにやってみろ』……ってさ」
「! (ゲンマ……)───先生、ありがとう。『行ってきます』って、兄にも」
「ああ。ちゃんと伝えておくよ」

受験をすると決めてから、周りから兄の言葉を聞く機会がグッと増えたような気がする。直接言えないからって先生にわざわざ伝言を頼むなんて。ブラコンの自覚は前々からあったけれど、あの人も大概だ。

「ヨシッ、行くってばよ!」





─────……いよいよ試験会場へと足を踏み入れ、扉の先に広がる光景に思わず間の抜けた声を漏らしたナルトやサクラとは裏腹に私は驚きのあまり声も出せなかった。
人、人、人───教室を埋め尽くさんばかりと言うよりもうキャパシティをオーバーしているのではないかと言うほどのとにかくたくさんの人。他国の忍も集まっていることは知っていたけれど、これほどまでとは思っていなくて、予想を遥かに超えた人の多さに唖然とするしかない。

(! あ、)

どこからともなく感じるピリピリとした雰囲気にあてもなくふよふよと視線を泳がせていると、ふと懐かしい顔ぶれを見つけた。

「サスケくん、おっそーい! 私ったら久しぶりにサスケくんに会えるとおもってえ、ワクワクして待っていたんだからー!」
「サスケくんから離れーっ、いのぶた!」
「あーら、サクラじゃない。相変わらずのデコリ具合ね。ブサイクー」
「なんですってー!」
「何だよ。こんな面倒くせー試験、お前等も受けんのかよ」

最初にこちらに来たのはいの、シカマル、チョウジの第十班。サクラに負けず劣らずサスケ一筋ないのも、シカマルのものぐさ具合も、チョウジの食欲旺盛さもアカデミーで見ていた頃と変わっていなくて不思議と安心する。

「ひゃっほー見ーっけ! これはこれは皆さんお揃いで」
「こ、こんにちは」

人が固まっていれば自然と目につきやすくなるわけで、キバ、ヒナタ、シノの第八班も集まって来る。十班と同じくこちらも変わらず元気そうで自然と安堵の息が零れた。

「なるほどね! 今年の新人全員が受験ってわけか。さて、どこまで行けますかね、俺達。ねえ? サスケくん?」
「フン。えらく余裕だな、キバ」
「俺達は相当修行したからな。お前等には負けねーぜ!」
「うっせーってばよ! サスケならともかく俺がお前等なんかに負けるか!」

だんだんとさっきまでは教室中に感じていたピリついた空気が一点に、それも私達の元へ集まっているような気がして。これはさすがに言った方が良いのかもしれないと息を吸った瞬間───……。

「君達、もう少し静かにした方が良いな」
「……っ、」
「なまえ?」

何度も感じて来たものの中でどれよりも直接的で、どれよりも目を逸らしたくなる感覚。上手く言えないけれど、無意識に震えてしまいそうなほどの悪寒をどうにかごまかそうと咄嗟に掴んだのは、シカマルの服だった。当然、シカマルは訝しむように私を一瞥したけれど、特に追及するわけでもなくそっと好きなようにさせてくれた。その気遣いがとても嬉しくて、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
ごめんね、シカマル。今、何か言おうとしたらきっと声まで震えてひどく情けないことになってしまいそうだから。

「まあ、仕方ないか。君達みたいな新人を見ていると昔の自分を思い出すよ。ははっ、そんな可愛い後輩にちょっとだけ情報をあげようかな? この忍識札でね」

カブトと名乗ったその人は今回が4年目の受験になるらしい。こんな感覚をまとう人が、そう思わないこともないけれどそれだけこの中忍試験が狭き門と言うことなのだろうか。私が考え過ぎているだけなのだろうか。

「忍識札は簡単に言えば情報をチャクラで記号化して焼きつけてある札のことだ。この試験用に情報収集を4年もかけてやった。札は全部で200枚近くある」
「それには個人情報も詳しく入っているのか?」
「もちろん。今回の受験者の情報は完璧とまではいかないが焼きつけて保存してある。君達の分も含めてね。気になる奴について君が知っている情報を何でも言ってみな? 検索してあげよう」
「砂隠れの我愛羅、それに木ノ葉のロック・リーって奴だ」
「何だ、名前まで分かっているのか。それなら早い」

皆がこぞって忍識札を覗き込んだ頃には嫌な感覚も大分治まって来ていて、もう大丈夫だからと好きなようにさせておいてくれたシカマルにお礼を言いながら掴んだままだった服からゆっくりと手を離した。

「大丈夫なのかよ?」
「うん。いきなりごめんね?」
「いや、別に構わねーけどよ。お前、あんま無理すんなよ」
「! うん。ありがとう。シカマル」
「木ノ葉、砂、雨、草、滝、音。今年もそれぞれの隠れ里の優秀な下忍がたくさん受験に来ている。まあ、音隠れの里は近年誕生した小国の里だから情報はあまりないが、それ以外は凄腕ばかりの隠れ里だ」
「つまり、ここに集まった受験者は皆……」
「そう! リーや我愛羅のように各国から選りすぐられた下忍のエリート達なんだ。この試験、そんなに甘いもんじゃないよ」

ふと、小刻みに肩を震わせるナルトの姿が目に入った。さすがのナルトも少なからず緊張しているのだろうか。サクラも同じことを考えたのかもしれない。だから───……。

「ナルト、そんなにビクつかなくても……」
「俺の名はうずまきナルトだ! テメー等には負けねーぞ!」

意外性ナンバーワンのドタバタ忍者───思い出したそれはやっぱりナルトにぴったりだ。苦笑ではあったけれど笑わずにいられなくて、おかげで心なしか体が軽くなったような気がする。何て考えていると───……。

(! 何か来る)

気配が二つ、それも明らかな敵意とか殺意とかそう言った類いのものを撒き散らして近づいて来ている。

「カブトさん、正面!」

頭上のクナイに気を取られているカブトさんの正面には既にもう一つの意識が迫って来ていて咄嗟に声を張り上げれば、それが功を奏したかどうかは定かでないけれど彼は冷静に体を反らして攻撃を躱したのに。

「!」
「どう言うことだ? 躱したはずなのになぜ眼鏡が」
「鼻先を掠めたんだろ。ケッ、粋がっているからだよ」

違う。カブトさんは今の攻撃を完璧に見切っていた。恐らく仕掛けのネタはあの腕の武器そのものにあるのだろう。

「! うええ……っ」
「あ、吐いた!?」
「カ、カブトさん! 大丈夫!?」
「なーんだ。大したことないんだな。4年も受験しているベテランのくせに」
「あんたの札に書いておきな。音隠れ3名は中忍確実ってな」

完璧に避けたはずなのに割れた眼鏡と、直後に嘔吐したことから察するにあの人の攻撃は直接的な攻撃に加えて三半規管に働きかけるものなのかもしれない。相手がわざわざ説明してくれるなんてことはあり得ないから、あくまで予想の範疇を出ないのだけれど。

ボンッ!!

「静かにしやがれ。どくされ野郎共が!」

お互いの間に流れる一触即発の空気を一蹴するかのように教室の前方で大きく煙幕が上がった。

「待たせたな。中忍選抜第一の試験・試験官の森乃イビキだ」

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