鳴門 | ナノ
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10.


飛雷神の術は使う度に目に見えて威力が落ちていき、終いには白の攻撃から完璧に回避することが難しくなってしまった。あれほどの大口を叩いておいてあまりにも情けない。そして、恐らくサスケはそのことに気づいている。だから迫って来る千本の軌道を必死に見極めようとしていて、その成果は着実に表れ始めていた。

「そうか。君も血継限界の血を……」

血を写し取ったかのような赤い瞳に闇色の巴模様──カカシ先生の左目と同じ、写輪眼。それがうちはの血継限界であり、サスケの才能の内の一つ。

「だとすれば、そう長くは戦えません。僕の術はかなりのチャクラを使うので、術による移動スピードを保つのにも限界があります。それは彼女も同じでしょう」

ほんの一瞬、白の意識がこちらへ向けられたような気がした。

「恐らく戦いが長引けば長引くほど、僕の動きは君の読みの範疇に入ってしまう。事実、君の目はすでに僕を捉え始めている……ならば!」

今までにないほどの鋭い殺気。それを向けられているのは私でもサスケでもなく……と言うことは。

(ナルト!)

駆け出したのは、ほぼ同時だった。けれど、より近くにいた私の方がナルトの元に早くたどり着いて、気休めにしかならないと分かりつつもホルスターから引き抜いたクナイを構える。



───……。



「全く……お前は、いつまで経っても足手まといだぜ……」

ナルトの前に立った時には覚悟を決めたはずだった。
あれほどの殺気を放っておいて相手が手を抜くとは到底思えなかったし、これは任務で、忍同士の戦いなのだと。だからこそ、目の前に光景を頭がなかなか消化してくれなかったのだ。

「サスケ……? っ、サスケ!」

信じられなかった。全身に千本を受けながら、大量の血を吐くサスケが目の前にいるだなんて。

「なまえも後先考えずに突っ走りやがって……お前も、ウスラトンカチだったかよ」
「サスケ……どうして私まで、」
「フン…知るかよ。体に勝手に動いちまったんだよ。くそっ…!」

グラリとサスケの体が傾いて、未だに固まったままでいる私の代わりにナルトが咄嗟に受け止めた。

「あの男を、兄貴を殺すまで死んで堪るかって思ってたのに……お前等は死ぬな……」

夢でも、相手が仕掛けた幻術でもない、これは紛れもない現実。たった今、サスケの息が止まったのだから。

「彼は僕に一撃をくれ、怯むことなく君達を守って死にました。大切なものを守るために罠だと知って飛び込んで行ける……彼は尊敬に値する忍でした。仲間の死は初めてですか? これが忍の道ですよ」

ゾクッ──すぐ側から嫌なものを感じた。
再び鏡の中へ戻って行く白の殺気が気にならなくなるくらい重たくて、悲しげなそれは……。

「許さねえ…! 殺してやる!!」
「ナル、ト…?」

溢れ出した何かが狐の頭のような姿を模ったかと思うと、ナルトの傷がみるみる消えていく。あれは、チャクラなのだろうか? もし、そうだとすれば途轍もなく高濃度のチャクラになる……こんなものがあるなんて。

「!」
「っ、ナルト、待って!」

私の声なんてまるで届いていないと言わんばかりにナルトが凄まじいスピードで白が映る鏡へと突っ込んで行ってしまった。
なぜと聞かれても上手く答えられないけれど、今のナルトは普通じゃない。何が何でも止めなくては、そんな気さする。このままでは駄目だ。でも、だからと言ってサスケから離れることをどうしても躊躇ってしまう。

「うおおおーっ!」

情けないことに私がうだうだと迷っている間にナルトはついに白を捕らえ、力の限り仮面ごと顔を殴りつけた。そして、吹っ飛ばされた白に追撃を与えるべく地面を蹴った姿にやっぱりこのままでは駄目なのだと確信する。

「ナルト、止まって!」

聞こえていないと分かっていても、喉が裂けるのではないかと思うくらい力の限り声を張り上げた。やっぱり止まってくれないナルトの背中へ伸びる何かと、不意に全身を襲った熱を感じながら私の意識はぷつりと途切れたのだった。

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