04




しばらくして、宇崎は体操着を手に戻ってきた。
ほんの数分前に美原先輩が出て行ったばっかりなんだけど……まあ、これは言わなくてもいっか。
いちいち報告するほどのことでもないし。

「ていうか、あれ?宇崎、これ私のジャージじゃないよ」

渡された体操着を広げると、明らかに大きさの違うそれ。
男物じゃないか。

「間違えるなんて、宇崎も意外にドジだねー」
「ちげーよ。お前のは何つーか……まあ、いいから、さっさとそれ着ろっての。風邪引くぞ」
「あ、もしかして、宇崎のジャージ?」
「……」
「私のは、着れる状態じゃなかったとか」

するりと外された視線。
宇崎は何も答えなかったけど、そのしぐさが肯定を物語ってる。

……分かりやすいなぁ。

それにしても、そっか。
とうとう体操着まで被害に遭ってしまったんだ。

買い換えなきゃな、と頭の片隅でぼんやり思う。

「……いいから着替えろ。見張っててやるから」

仕切りの向こう側を指差し、宇崎は退室していった。

残された私はそっとため息をつき、いそいそと仕切りの向こうに移動して、着替えを始めた。

「……あ」

制服を脱いだところで気がついた。

渡された体操着の間に挟まるようにしてあった、下着の存在に。

「……」

未開封のそれは、まだ新品で、私はつい思考が停止してしまう。

……えっと。
これは、宇崎が気を遣って手配してくれた、ってことでいいのかな。

あの宇崎が?
いや、そもそも、こんなものを男の宇崎がどうやって……。

色々な疑問は尽きなかったけれど、とりあえずは有り難く着替えさせてもらうことにした。
上だけ着替えたって、下着が濡れたままだったら元も子もないもんね。

なんだか妙な気分になりながら、新品の下着に手を伸ばしかけた時。


「―――いるんだろッ!白波空音!!」



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