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「ねえ、宇崎。それより良かったの?みんなの前で私を連れ出して……それに、“俺預かりにする”ってどういうこと?」

ゆっくりと話ができるようにと、宇崎が案内してくれたのは使用頻度の少ない北校舎三階。
古びた教室だった。

ここ、入れたんだ……。
幽霊が出てきそうな雰囲気の中、室内には生徒の私物と見られる真新しい物がちょくちょく置かれており、誰かが頻繁に出入りしている様子が窺える。

しかも、部屋の窓際にはワインレッドのソファ。
あれ?
一応、ここは教室のはずだよね。
思わず目をこする。

「あー、俺の隠れ家なんだよ、ここ。一人になりたいときとか使ってんの。だから誰にも言うなよ」

私の視線に気づいたのか、宇崎が説明してくれる。

「へ〜」

そうなんだ。いいな。

……って、違う違う。

「最初の質問に答えてよ、宇崎」

遠慮なくソファにダイブして、その柔らかな感触を堪能しつつ、きちんと口は動かす私。

どうだ、できた女だろう。

「……遠慮がないのはお前の美徳なのか、悩ましいとこだな」
「ソファにお邪魔しました。よろしかったですか?」
「過去形じゃねぇか!」

だってこのソファ、ふかふかなんだよ。
学校でソファに寝転がることなんてまずないから、ますます心地よさを助長させてくれる。

この、いかんともし難い極楽に浸っていれば、宇崎がいつの間にか隣へやってきて、空いてるスペースに座った。
私がほとんどを占領していて、わずかな隙間しかないというのに……。
なるほどこやつも、ソファという魔物の虜なのか。

「いいんだよ、これで」

唐突に宇崎が話し出したので、はてなんのことかと逡巡するのも束の間。
どうやらさっきの質問に答えてくれているらしい。

「俺がお前を守ってやるから。お前は何も、気にしなくていい」

宇崎の大きな手が寝転んだままの私の頭を撫でてくれる。

……この感触。
久しぶりだなあ。

もう二度と、宇崎が私に触れてくれることはないと思っていたため、不意に涙が出そうになった。

あたたかい。
誰かの温もりは、こんなにも気持ちがいい。

そして、優しく指で髪を梳く仕草が微睡みを誘い、私はついウトウトしてしまった。

「お前のためなら―――怒篭魂だって抜けてもいいと、俺は本気で思ってるぜ」

最後のセリフは私が創り出した幻想なのか。

それとも……。











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