強子とNo.2

一回戦目が一通り終わった。
小休憩を挟んだら、二回戦が始まる。


「おーう爆豪、何か大変だったな悪人面!!」

「組み合わせの妙とはいえ、とんでもないヒールっぷりだったわ爆豪ちゃん」

「うぅるっせえんだよ黙れ!!」


試合を終えて戻ってきた爆豪に気づき、何人かが彼に声をかけたが、彼は相変わらず不遜な態度で、どすどすと歩いている。
強子はそちらをちらりとも見ず、今は誰も立っていないステージをじっと見つめていた。


「まァーしかし、か弱い女の子によくあんな思い切りのいい爆破できるな!俺はもー、つい遠慮しちまって・・・」

「完封されてたわ、上鳴ちゃん」

「・・・あのな、梅雨ちゃん・・・」

「フンッ!!」


ドカッと大きな音が聞こえ、何ごとかと思わず振り向けば、爆豪が荒っぽく椅子に腰かけた音であった。
座る動作ひとつで、なぜそうも乱暴にやかましく出来るのかと若干イラっとしながら彼を睨んでいると、強子は気が付いてしまった。


「・・・どこが か弱ェんだよ」


そうつぶやいた爆豪の横顔。
いつもながらの不機嫌な表情の中にある、どこか余裕の無さそうな、いつも以上に気を引き締めた顔。
思いつめたような彼から咄嗟に目をそらすと、強子はすっくと立ち上がった。


「?・・・強子、どうかした?」

「もうすぐ二回戦はじまっちゃうよ?」

「うん・・・ちょっと、あの・・・顔を洗ってくる!」


不思議そうに強子を見つめるクラスメイト達の視線から逃れるよう、足早に座席から離れる。


「・・・どうしたんだろ。あの子、なんか変じゃなかった?」

「身能が変なのはいつものことだろ?」

「・・・やっぱり、緊張してるんじゃないかな?」

「なんせ次は常闇とだろ?無理もないって」


そんな見当違いなことを言っているのが聞こえるが、強子は彼らには見向きもせず、観客席を後にして、スタジアムの通路へと駆け込んだ。
スタジアムの洗面所に入ると、強子はバシャバシャと顔を洗う。


「・・・ふぅ」


少しだけ、気持ちがすっきりした。自分の中で燻ぶっていたもやもやとした感情を、少しは洗い流せたような気がする。


「(・・・なにをイライラしてるんだ、私は・・・)」


爆豪のことを考えると、イラついてしょうがない。
あいつのことで腹を立てるのは以前からよくあることだけど、今回のは、今までのそれとはちょっと違う。爆豪が強子に対して何かしたわけでもないし。
ただ、麗日をライバルとして認めているような爆豪の態度を見て、勝手に強子が・・・嫌な気持ちになっただけだ。寂しさにも似た、やるせない気持ち。


「(これは、いわゆる“嫉妬”ってやつだよね・・・)」


嫉妬といってもそれは、愛だの恋だのとは縁のない話。
強子にとって宿敵ともいえる爆豪が、同じヒーローを目指す同志として、実力を認めている相手――それが、強子ではないことが面白くないのである。
これが緑谷なら、納得がいく。彼ら幼馴染の関係性や、緑谷のすごい部分を知っているから。
また、轟だったとしても納得できる。彼は間違いなく強く、強子も戦闘訓練で負かされている相手だ。
でも、麗日は・・・正直いって、ノーマークだった(と言ったら彼女に失礼だけれど)。
好戦的なタイプには見えないし、個性も戦闘向きじゃないし、非力な女子だし。
だからこそ、爆豪の彼女に対する態度が気に入らなかった。
だって、あいつが強子を、あんなに思いつめた表情で見たことなんてない。彼女より強子のほうが劣っているとでもいうのか?
それに、あいつが強子を名前で呼んだこともない。彼女に先を越されたようで、いい気はしない。


「(まったく、やんなっちゃうよなぁ)」


人生2週目とあって、自分の抱いた感情を客観的に分析できてしまう自分が憎い。
それと同時に、人生2週目にもなって、こんな感情ひとつに振り回されている自分が情けない。


「ああ、もうっ・・・」


―――こんなんじゃ駄目だ。
いちいち感情に流されているようでは、トップヒーローになど、なれやしない!己の感情は己でコントロールできるようにならなければ!
そう意気込むと、洗面所を出て、観客席へ戻る道をずんずんと力強く歩み出した強子。


「身能強子、というのは・・・君のことか?」

「?」


背後から声をかけられ、強子は足をとめて声の主へと振り返った。


「!?・・・んぇッ、げほっ、エンデヴァー!!」


そこには、炎をまとった大柄な体躯の男―――トップ2ヒーローのエンデヴァーがいた。
目の前のその男がまとう凄まじい威圧感に、強子は思わずごくりと唾をのんだ。


「・・・お前が身能強子で間違いないな?」


問いに答えない強子に、気分を害したようにエンデヴァーが眉をひそめてもう一度きく。
それにハッと慌てて強子は口を開いた。


「そ、そうですけど・・・私に何かご用でしょうか?」


ビビりながら、それでも正面から彼を見据えた。
・・・そりゃ、洗面所を出たところでNo.2ヒーローが待ち構えてたら、誰だってビビるわ。
もうすぐ轟と緑谷の試合が始まるというタイミングで、いったい強子に何の用があるというんだ。
思い当たることがあるとすれば、オールマイト関連だろうか。なんせ強子はオールマイトの推薦で入学しているのだ。エンデヴァーからしたら、気に食わない存在なのでは?


「俺は回りくどいのは嫌いだ。時間もあまりないことだしな――単刀直入に聞くとしよう」

「っ・・・」


ギロリと高いところから見下ろされ、彼が強子に対して友好的ではないことを察する。強子の身体には無意識に力が入り、顔も強張って、険しい表情になっている。


「お前―――ウチの焦凍とはどういう関係だ?」

「・・・・・・ハ?」


強子は険しい表情のまま、かろうじて、声を発することに成功した。
エンデヴァーから問われた内容を理解できず、強子の頭はフリーズする。


「だから、お前と轟焦凍との関係性は何だと聞いている!」

「・・・なぜ!?」


本当にわけがわからず、強子は表情を崩してエンデヴァーの質問に質問で返した。
強子と轟の関係性などと聞かれても・・・別に何てことはない。クラスメイトであり、ただの友だちだ。
確かに、轟の中に妙なライバル心が芽生えて宣戦布告のようなものをされたが・・・そんなことはエンデヴァーの知らぬところだろうし、興味もないだろう。
では何故、そんな質問がエンデヴァーの口から飛び出したのか。それがわからぬ限り、どう答えたものかと考えあぐねる。


「とぼけるな―――お前と焦凍が恋仲にあると、学生らがそう話していたのを聞いたぞ!!」


ふぁっ!?
強子はあんぐりと口を開け、目もこぼれ落ちそうなほどに見開いた。


「それを聞いて、ただの噂だろうと考えていたが・・・どうにも焦凍がお前を気にしているのは事実のようだし、昼休憩の前にもお前を探す焦凍の姿があった」

「・・・い、いや、それはっ・・・!」


それこそ、愛だの恋だのとは縁のない話だろ。
轟が強子を気にかけるのは、戦闘訓練時に組み敷いたことを根にもっていて、リベンジのチャンスを狙っていたからだろう。昼休憩前は、強子に宣戦布告するために探していただけだ。なんなら緑谷も同じ立場である。


「焦凍はいずれオールマイトすらも超えてNo.1になる男だ。くだらん恋愛感情なぞ、邪魔なだけだ!要らんものは捨て置き、強くなることだけに執着しなくてはならんのだ!アレには、色恋沙汰などに割く時間なんざ1秒たりとも無い!!もし貴様が焦凍とそういう関係にあるのだとすれば・・・いますぐに別れてもらわなくては!!」


破竹の勢いで怒鳴り散らすエンデヴァーに、強子は青ざめた顔で一歩後ずさった。


「ちょ、ちょっ、ちょっとエンデヴァー・・・!?」

「・・・ああ、見返りが欲しいというのなら、多少の我が儘は聞いてやるぞ。なんだ、金か?」


そう言って嫌な笑みを浮かべると、財布でも取りだす気か、懐に手を忍ばせようとするエンデヴァー。
その言葉と所作に強子はムッと眉を寄せると、エンデヴァーが懐に手を忍ばせる前に、彼の腕を掴みあげ、ぐいと力任せに引き寄せた。


「!」

「エンデヴァー!あなたは勘違いしてます!」


ようやく口を閉じて強子を見つめるエンデヴァーに、今なら話を聞いてもらえそうだと安堵する。


「わたし、とどろ――焦凍くんとは、恋仲じゃないです!ただの友だちです!!」


目の前の男も苗字が轟であるのを思い出し、強子は気を利かせて、普段は呼ばない下の名前を使った。慣れなくて少しだけそわそわする・・・が、今はそんなことを言っている場合ではない。


「誰が話していた噂か知りませんけど、誤解です!当事者の私が言うんだから、間違いないです!そうでしょう!?」


エンデヴァーとて、強子本人にわざわざ確認したのだから、どこぞの誰かもわからない奴の話より、強子の話が信ぴょう性があると考えていたはずだ。
噂の出どころというのは不明だが・・・以前、マスコミが雄英校舎内に侵入したときの騒動で、密着していた強子と轟がそういう目で見られたことがあった。噂はその延長だろう。

強子は自分が嘘をついていないことを信じてもらいたくて、エンデヴァーの腕を握りしめたまま、彼の目をまっすぐに見つめる。
すると、少し間をあけた後、居心地が悪そうに彼から視線をそらした。


「・・・妙な勘違いで迷惑をかけたな。失礼した」

「(勝った・・・!)」


素直に謝ったエンデヴァーに、心の中でガッツポーズをしながら、強子は彼の腕を解放した。


「しかし・・・君はなかなか良い個性を持っているな。その細腕からは想像がつかないほどのパワーを発揮する」


彼の腕を掴んでいた強子の腕をまじまじと見つめ、彼は自身の顎に手を当てた。


「オールマイトの推薦があったというのも、わからなくはない。パワーはオールマイトに遠く及ばないものの・・・身体の使い方、戦い方は、奴を彷彿とさせた」

「!」


確かにパワーを比べるなら、強子の個性は『ワン・フォー・オール』には遠く及ばない。強子が密かにずっと気にしていることを、初対面の人に言い当てられるとは。
それに戦い方だって、オールマイトが戦う姿を参考に研究してきた動きなのだから、彼を彷彿とさせるのは当然だ。
悔しいが、トップヒーローは目も肥えているんだろう。いろいろとバレている。


「確か君は、まだトーナメントを勝ち進んでいたな?」

「あ、はい・・・」

「そうか。では・・・このまま勝ち上がり、焦凍と戦ってもらおうじゃないか」

「え!?」


驚いてエンデヴァーの顔を凝視する。


「あの緑髪の小僧にも言えることだが・・・君もだ。君と戦うことは、焦凍にとって得るものが少なからずあるだろう。オールマイトを超えるアレにとって、オールマイトが期待する君を超えることは、必要な過程のひとつとなる。そのためには―――先程のような柔弱で愚かしい戦い方はやめてくれたまえ」


出来るだろう?と、半ば強制するようにエンデヴァーが強子を見下ろしてくる。
強子はポカンとあいていた口をぎゅっと結ぶと、こぶしを握り締めた。


「(・・・どいつもこいつも、)」


ふざけてる。
エンデヴァーも、オールマイトも―――自分の教え子を鍛えるため、強子を踏み台にしようだなんて。


「次の試合も、その次の試合も・・・もちろん、手加減なしで本気で戦います!」

「ああ、そうでなくては・・・」

「でもっ、それはっ!!」


声を張り上げると同時に、彼を強く睨みつける。


「あなたのためでも、あなたの息子さんのためでも・・・オールマイトのためでもないっ!私は、私のために、戦うんです!!」


誰かの踏み台になるためじゃない。自分のために戦うんだ。自分の夢をかなえるために。


「それは・・・焦凍くんだって、同じです!!彼も自分のために頑張ってるんです!」


父親の個性を使わず“一番になる”ことで、父親を完全否定する。そう言った焦凍のことを思い出す。
彼は今、彼自身の誇りのために戦っているといえる。決して、エンデヴァーの野望のために戦っているわけではないのだ。


「出過ぎたことを言いますけど・・・」

「?」

「あなた、親バカすぎるんですよ!!」

「!?・・・なにを、」

「子供の未来に期待する気持ちはわかります!子供を手助けしたくなる気持ちも最もだと思います!子供が誤った道を進みそうなら、正しく導いてあげるべきだとも思います!」


これも、人生2週目だからだろうか。
親の“子に対する想い”というものが、強子にはなんとなく理解できる。
親にとってどれほど我が子が大切か、それでいて、どれほど我が子を心配しているのか。
親側の感情が、親側の言い分が、わかる。


「でも、あれこれ口出しし過ぎるのは・・・かえって子供の成長を妨げますからァ!!」


あれをしろ、これもしろ。あれはだめ、これもだめ。
そんな手取り足取りじゃ、子供は自分で考えることをやめ、いずれ自ら足を動かすこともやめてしまう。


「自分がやるべきことは、自分で見つけるべきなんだ。自分に足りてないものが何かも、自分で考えて、自分で克服しなくちゃ。そうでなきゃ・・・本当の意味で“成長”したことにはならない!」


学校の授業で、問題の答えだけを教えてもらうことがあるだろうか?否だ。
教師は、答えを教えるためにいるのではなく、考え方、解き方を教えるためにいる。だから、生徒は自分で答えを導き出すことができるようになる。
親子の関係だって、同じようなものだろう。
子供の生き方を決めて、押し付けるんじゃない。いろんな生き方があることを教え、そのうえで本人に選ばせるべきなんじゃないか?


「だが焦凍のやつは、今はくだらん反抗心で・・・」

「一度も間違えない完璧な人間なんて、この世にいませんよ!」


完全無欠な人なんか、いない。
あのオールマイトですら、間違えることがある。足りない部分がある。


「間違えても、それに気づいて直すことで、人は成長できるんです!欠点があっても、それを補う方法を見つけることで、強くなるんです!それに、一人じゃどうしようもない時は、まわりに頼ればいい・・・焦凍くんは、エンデヴァーの助力が必要だと感じたら、自分から行動にうつしますよ!」


轟焦凍という人は、賢い人間だから。きっかけさえあれば、自分のことをしっかり考え、先に進む方法を見つけることができるのだ。
今は憎くて仕方ないエンデヴァーからも得るものがあると気づけば、彼はそれを選択できる。


「だから・・・自分の子供のことを信じて、待ってあげることは出来ませんか?」


この拗れた親子関係のままじゃ、焦凍も、エンデヴァーも、お互いに報われない。
もう少し、息子が成長するまで、距離を置いてあげられないものだろうか。


「フンッ、くだらん。そんな悠長なことを言っている時間、アイツにはない!まったく・・・不毛な会話で無駄足をふんだな。本当に、見ず知らずの小娘には出過ぎたことだ」


彼は苛立たし気に、身体にまとう炎をざわつかせて、強子を眼下に見た。
親切心で言ったつもりだが、こんな態度をされては強子も、つい感情を抑えきれなくなる。


「いいんです、私は!出過ぎたことを言ったって!だって、見ず知らずの小娘じゃないしッ」


エンデヴァーが怪訝な表情をみせると、強子は含みのある笑みを浮かべて腰に手を当てた。


「だって私・・・轟くんの“一番の友だち”ですからッ!!」


売り言葉に買い言葉――そんな言葉が強子の脳裏をかすめた。
ついカッとなって、大きいことを言ってしまった気がする。でも、嘘はついてない。
1−Aのクラスの中で、轟と一番最初に友だちになったのは強子だ。半強制的にだったけど・・・なんだか彼からはすごい敵対心を抱かれてるけど・・・。
それでも、クラスで最初に彼が友だちと認めた相手は、強子なんだ。“一番の友だち”というのは、強子のことを指すと解釈できるはずだ!
・・・今後、彼が最も心を開くだろう相手は別だが。まあ、それは置いておいて。


「だから、轟くんの幸せを願って、彼にとって最善と思えることをする権利が・・・私にはあるんです!」

「・・・はぁ、付き合いきれん」


そう言うと、強子に背を向けて歩き出したエンデヴァー。


「焦凍の試合の前に、あっちの小僧にも一言いっておかなきゃならないのでな。失礼する」


どうやらこの後、緑谷に「みっともない試合はしないでくれたまえ」などと言いに行くらしい。
まったく、懲りない人だ。余計なことをすればするほど、息子からの反感を買うだろうに。


「・・・ふんっ」


エンデヴァーの姿が見えなくなると、威勢よく鼻から息を吹き出す。
大人というのは勝手なもんだと、強子は憤慨していた。
未来ある子供らに、勝手に期待して、勝手に託して・・・そのための糧になるのなら、他人をも勝手に利用する。


「・・・」


いや、勝手なのは、強子もだ。
轟の知らないところで、彼の身内に対して、ずけずけと好き勝手を言ってしまった。
あの家族が抱えているデリケートな問題は、赤の他人がおいそれと触れていいようなものではない。
見ず知らずの小娘が何か言ったところで状況が変わるほど、事態は単純じゃないし、確執は深い。

わかっている。強子の行動が余計なお世話だったってことは。
それでも―――なにか、してあげたかった。なにかせずにはいられなかった。強子にできることなら、なんでもよかった。
昼休憩の時、轟が強子に身の上話をしてくれたことに・・・何らかの意味や意図があったのだと、そう思いたかったんだ。
本来は緑谷のみにしか打ち明けないことを、強子にも打ち明けてくれた・・・その行為を無意味だったと言わせたくないから。


「(・・・緑谷くんが、羨ましい)」


ついに二回戦が始まり、轟と緑谷がステージ上で、ド派手にぶつかりあっている。
彼らの激戦を観客席から見下ろしながら、強子は深いため息をついた。


「君の!―――力じゃないか!!」


鬼気迫る様子で轟へと訴えかける緑谷。
その言葉で焚きつけられた轟が、ついに、その左半身に炎をまとわせた。
強子が“物語”として知っていた展開の通り。

緑谷は、彼の全力―――彼の炎を引き出すことができたのだ。ほかの誰もができなかったことを、緑谷はできた。
きっと緑谷は、轟から身の上話を聞いていたからこそ、彼の全力を引き出せたに違いない。
こうして、轟にとって“考える”きっかけができたことで、昼休憩のときの宣戦布告は、意味のあるものとなったんだ。

では、強子はどうだ?強子だって、轟から身の上話を聞いた。彼の思っていることを知った。彼が苦しんでいることを感じとった。
強子も、彼のためになることをしたい。彼が強くなるための手助けをしたい。彼が成長するきっかけとなりたい。彼を・・・救けたい。

そんなことを思っていたって、強子に成し遂げられたことなんて、何ひとつない。緑谷のように、誰かを救けるヒーローにはなれやしなかった。


「(結局、私は・・・何をやっても、緑谷くんには勝てないんだ)」


轟の全力の一撃により、場外まで吹き飛び、スタジアムの壁に打ち付けられた緑谷。とっくに気絶していて、骨まで粉砕されたボロボロの身体がどさりと横たわった。
そんなボロ雑巾のような姿であっても、強子には緑谷がやけに眩しく思え、目を細めた。










==========

テーマは嫉妬、的な。それと、羨望。
麗日や爆豪や緑谷に、張り合い憧れる夢主と、オールマイトに張り合い妬むエンデヴァーという対比も意識しています。実はけっこう似た者同士だったりするのです。

たぶん体育祭までが、夢主的にはもっともツラい時期かと。
職場体験からさらにプルスウルトラして、もう少し強いヒロインになります!




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