オリジン

ヴィランなんかに負けるわけがない。
強子の個性でヴィランどもをぶっ飛ばしてやる。強子の個性があれば、そんなの余裕だ。

・・・そう、思っていた。
それなりに自信もあった――はずなのに。


「(なのに、なんで・・・ッ!?)」


救助訓練のためにやってきたUSJに、突如あらわれたヴィラン。
奴らから生徒たちを守るように、相澤が一人で、集団を相手に戦闘していた。
離れたところからそれを視界にとらえていた強子は、胃の中のものがせり上がってくる感覚に、慌てて手の甲で口元を押さえた。


「ぅ、ぉえっ・・・!」

「強子さん!?どうなさったんです!?」


えずく強子に気付いた八百万が声をかけるが、それに応える余裕などなかった。
強子の手は小刻みに震え、足も震えて力が入らない。
視界は狭まり、まわりの音も聞こえず、自身の呼吸音がやたらうるさい。ヒューヒューと浅い呼吸を繰り返して、どんどん胸が苦しくなってくる。

視界がくらくらと揺れてバランスを保てなくなり、強子はとうとうその場に膝をついた。

―――ああ、気持ちが悪い。

吐き気を堪えるよう、強く目蓋を閉じた。















目の前に、古い、懐かしい情景が浮かんでくる。

暗くて、狭い、通いなれた道。
星も見えないような暗い夜空だが、歩道にぽつぽつと均等に並ぶ街灯が、かろうじて進む道を照らしている。

・・・ああ、そうか。
ここは“私”が毎日通っていた道だ。

ぐったりと疲労を感じる重たい身体を引きずって、自宅へと向かっている。

ああ、そうだ。
今日の仕事を終えて、ようやく帰るところだったんだっけ。

早く帰ろう。
そう足早に歩いている中、そいつは現れた。

夜道で遭遇した相手――それだけでも警戒するには十分だろうが・・・そいつは明らかに危険だと、瞬時に理解した。
そいつの手元には、妖しく光る刃物を携えていたから。
刃渡りの長い包丁、いや、ナタだろうか。とにかく鋭利な刃の得物を手に、その男は道を塞ぐように佇んでいる。

すぐさま、そいつから逃げようと反対方向に向かって走り出すが、“私”は女で、そいつは男。逃げることはかなわず、あっという間に捕まってしまった。

近距離でそいつの顔を見て、目を見開いた。ぞっと悪寒が走り、息をとめる。
その悪意に満ちた顔に、血の気が引いていく。足がすくんでしまう。
かつて感じたことのないほどの恐怖に身体が支配され、もう自分の思うように身体を動かせなかった。

知り合い、ではないと思う。
なぜこの人が自分に悪意を向けているのか、まったく理解できない。
これまでの人生、普通に、平凡な人生を送ってきた。
誰かから強い憎しみ、恨みを抱かれるようなことをした覚えはないというのに。

けれど、確かにこの男は“私”を狙っていた。
“私”を殺そうとしていた。

男が鈍く光っている刃物を“私”に振りかぶって、まず最初に、左腕に衝撃が走った。
僅か一瞬、熱さが駆け巡った後に、耐えがたい激痛が腕を襲う。
左腕からどくどくと温かい血が絶えず流れていく。ぬるりと気持ちの悪い感触が腕から伝わって、衣服のあちこちを赤黒く染めていく。

あまりの腕の痛みに地面に崩れおちると、今度は右肩に衝撃が走った。
衝撃とともに、うつ伏せに地面へと押しつけられる。

地面に伏せた“私”の背中に、一度、二度、三度・・・繰り返し刃が突き立てられていく。刺されるたびに、身体が勝手にびくんびくんと痙攣を起こす。全身に激痛が走る。

痛みを訴えても、やめてくれと懇願しても、そいつは幾度と刃物を振り上げ、“私”に向けて振り下ろす。
・・・もっとも、声なんてもう発せていなかったかもしれない。

なぜ、自分なのか。顔見知りでもなんでもないのに。
通り魔というやつだろうか。傷つける相手は、誰でも良かったのだろうか?だとしたら・・・それこそ、どうして自分に白羽の矢が立ったのか。

こんなわけもわからないまま殺されるなんて、嫌だ。
光の届かない暗がりで、家族や親しい人たちの知らぬうちに、あっけなく息絶えるなんて、嫌だ。
なにひとつ成し遂げられないまま、人生の幕を閉じるなんて、嫌だ。
自分という人間がこの世にいた証を、なんにも残せないまま死ぬなんて、嫌だ。

何かを訴えるように口をはくはくと動かすが、やはり声なんて出なくて、出てくるのは情けない空気音だけ。
身体中が痛くて、動かそうとしてもピクリとも反応しない。

けれど唯一、右腕だけはかろうじて動かすことができた。驚くほどに重く感じるが、最後の力を振り絞って、右腕を宙へと伸ばした。



どうか・・・


お願いだ・・・


誰か・・・誰でもいいから・・・


私を、救けて・・・!!



涙が滲むほどに強く懇願して、心が叫びをあげる。

でも、その願いが聞き届けられることはなかった。
伸ばした右腕は、男の足によって、ぐちゃりと踏みつぶされたから。
最後の自由まで奪われ、ついに全身が動かせなくなる。やがて、身体のどの部分が痛いのかもわからなくなって、痛みの感覚すらなくなって、凍るように身体が冷たくなって。
思考がまともに働かなくなり、ぼやけた頭で、自分を殺したそいつを見上げた。

薄暗い街頭の灯りで照らされたそいつの顔は、とても楽しそうで、恍惚としていて・・・ただただ、途方もない、純粋な悪意に満ちていた。















ああ、気持ちが悪い。
せっかく今まで忘れていたのに、思い出してしまった。

ヴィラン連合の奴らの姿を視界にとらえた時、“私”が死んだときの記憶がフラッシュバックした。

死んでいく“私”の痛みを、苦しみを、恐怖を思い出した。
死んだ“私”の、理不尽に殺されたことに対する怒りと絶望を思い出した。
“私”を殺した奴の、あくなき悪意を思い出した。

奴の顔と、ヴィラン連合の奴らの顔が、重なって見えたせいだ。
だから、思い出してしまったんだ。
無力に、無残に、あっけなく殺されていく感覚。

そしてそれは、一度思い出してしまえば、こびりついて消えてくれやしない。
強く閉じた目蓋の裏で、何度も何度も、あの情景が繰り返される。





「―――・・・いっ、おい!身能!!」


誰かの呼びかけに、強子の意識が浮上する。
どこかぼーっと呆けている様子で、ゆっくりと声の主を見た。


「なあ、身能!お前も戦ってくれッ!」

「え・・・?」


強子の視界に飛び込んできたのは、腕を硬化させ、ヴィランからの攻撃を防いでいる切島だった。
切迫した様子で、強子に向けて声を張り上げている。

状況を飲み込めないまま周囲を見渡すと、切島も強子も倒壊しかけたビルのような場所にいた。
先ほどまではUSJの入り口付近にいたわけだが、おそらく、黒霧の個性『ワープゲート』によって、この倒壊ゾーンに飛ばされたのだろう。
しかし、それだけなら良かったが、強子たちは、大勢のヴィランに囲まれている。


「・・・ッ!」


卑しい笑みを浮かべているヴィランたちを見て、あの記憶が再び脳裏をかすめる。
押し寄せる吐き気に、また口元を押さえた。


「なぁおいッ、この状況だ!んなとこに座り込んでないで身能も戦わねえとヤバいって!」


切島の言葉に、強子は愕然とする。

強子に、ヴィランたちと戦えというのか。
人を殺すことに躊躇しないような奴らに、立ち向かえというのか。
悪意ある人間に殺され、『死』というものをリアルに体感した強子に、悪意ある連中と戦うことを強要するというのか。

知っているか?
人の命なんて儚いものなんだ。人間の身体なんて、脆いものなんだ。
人間の生涯なんてのは、簡単に、あっけなく、一瞬にして無にかえってしまうものだ。
だから、


「ぃ、やだ・・・」


もう、嫌なんだ。
またあの時のように、無力に、無残に殺されるなんて。
せっかく生まれ変わったのに、また殺されるなんて。


死にたくない。


死にたくない!


死にたくない!!


あの時の死の追憶が、強子の身体を恐怖で支配する。
本能的に、強子の身体は戦うことを拒絶したのだろう。
息苦しくなって、呼吸が速くなる。嫌な汗がとまらず、手足がまた震え出す。
ぐらぐらと視界が回転するような感覚に襲われる。
直後、強い嘔気に襲われて強子は顔を俯けた。


「ぅ、オエェッ・・・!」

「身能!?」


強子の異変に気付いた切島が、焦った表情でちらりと強子を見やった。
彼女の様子を確認すると、逡巡したのち、彼は強子に言いわたす。


「・・・戦えねぇなら、俺か爆豪の近くにいろよ!離れちまったら守れねぇからな!」


切島の言葉に、この倒壊ゾーンに、もう一人飛ばされた人物がいたことを思い出した。
同時に、強子の背後で爆発音がとどろいた。
吹きつけた爆風に反射的にそちらへと振り向くと、軽々とヴィランをなぎ飛ばしている爆豪がいた。
視界にとらえた爆豪は、その瞳でヴィランではなく強子のことを射ぬいていて、思わず強子は身構えた。


「・・・ふ、ざっけんな、」


爆豪が声を絞り出す。
彼の視線は強子に向けたままなので、おそらくは強子に向けて言っているのだろう。


「お前も、戦え!!」

「・・・っ!」


有無を言わさぬ、爆豪の言葉。


「お、おい爆豪!」


強子の異変に対する気遣いもなく、横暴に言い捨てた爆豪に、切島は慌てて口をはさもうとするが、


「ヒーロー科だろが!!」


その言葉に、切島はハッとして口を噤んだ。
彼の言わんとすることを、切島も強子も理解する。

切島に強子、そして爆豪も、ヒーロー科に在籍している。ヒーローを志す者なのだ。
つまり、ヴィランと戦い、ヴィランに勝たなくてはいけない存在になるんだ。
それがどうして、ヴィランとの戦いを避けられようか。
戦いから逃げてしまっては、ヒーローになることからも逃げることになる。

それは理解できる。
それでも、いざ、殺意に満ちたヴィランを目の前にしたら、嫌でも恐怖を覚えてしまうんだ。
為すすべなく殺される恐怖を知っている強子に、戦うことなんて・・・


「こんな所でうずくまって、守られてるだけの非力な奴じゃねーだろッ、てめェはよ!」


そう怒鳴りながら、着々と周囲のヴィランどもを爆破の威力で倒していく爆豪。
強子は彼をぽかんと見つめて、固まった。


「こんな雑魚ども、てめェの個性でぶっ飛ばせや!てめェにはそんだけの力があんだろうがッ!!」


その言葉に、強子は目を見開いた。


「・・・・・・あ、そっか」


静かに呟くと、強子はゆらりと立ち上がった。
その足は、もう震えていない。手の指先まで、震えもなく、感覚がしっかりとある。
先ほどまでの吐き気も、もうおさまった。

爆豪の言葉で、思い出した。自分が誰なのかを。

私は、身能強子だ。
他者の悪意によって為すすべなく殺されてしまった、無力な“私”ではない。

私は身能強子という、恵まれた人間だ。
生まれ変わった私には、個性という力がある。もう、以前のように無力じゃない。
それも、あの爆豪勝己が認めるほどの力だ。それって、すごくないか?
今この場にいる多数のヴィラン、そいつらを強子なら倒せると、爆豪が信じてくれている。それなら・・・


「・・・やるしかない」


覚悟を決めた強子は、鋭い視線でまわりを見渡した。
すでにかなりの人数のヴィランが倒れており、残すヴィランは、切島と爆豪が相対している二人のほか、三人しかいないようだ。
瞬時に状況を把握すると、強子は思いきり地面を蹴って、一番近くにいたヴィランとの距離をつめる。
クラスで飯田に次ぐ速さを誇る強子のスピードだ。ヴィランが反応を示す前には、強子はそのヴィランの顎にアッパーパンチを食らわせた。


「「ッ!?」」


あまりの速さに、残ったヴィランたちが瞠目する。
いや、彼女を案じていた切島も、彼女に発破をかけた爆豪すら、目を見張った。

もろにアッパーを食らったヴィランは意識を飛ばし、そのでかい図体が地面に倒れる。
しかし、地面に倒れる前には強子は次のヴィランに狙いを定めていた。相手のふところに潜り込むと、腹部に力いっぱいのパンチを沈めた。


「ぐふぅ・・・!」


二人目のヴィランが倒れ、三人目に目を向ける。と、そいつは目をぎらつかせて強子に向かって突進してきている。


「この女ァ!急に調子にのりやがって・・・今すぐぶっ殺してやる!!」


明確に強子に向けられた殺意だ。けれど、強子はもう怯える表情を見せず、正面からそいつと向き合い、迎え撃つ。
鋭い爪をもったヴィランの腕が強子に襲い掛かるが、強子はヴィランの攻撃をひょいとかわすとその腕をつかみ、


「っそい!」


相手のつっこんできた勢いを殺さず、背負い投げでヴィランを放り投げた。
投げ飛ばされたヴィランは勢いよく壁にぶつかり、壁にめり込むように張りついて動かなくなった。

強子が三人のヴィランを相手にする間、わずか数秒であった。


「なんだ、弱いじゃん」


戦ってみれば、なんてことない雑魚敵だった。
ヴィランに対してあんなに恐怖していた自分が恥ずかしくなってくるレベルだ。


「これで全部か・・・」


パンパンと手をはたいて汚れを落としていると、爆豪たちも戦いを終えたらしい。
強子たちのまわりには、大勢のヴィランたちが瀕死状態で倒れている。


「身能、お前もう大丈夫なのか!?さっきは様子がヤバそうだったから心配したぜ!」

「ああ、うん。その・・・お見苦しいところをお見せしました・・・」


恥ずかしそうにうしろ頭をかきながら、強子は苦笑する。まったく、自分が情けない。
考えてみれば、トラウマの追憶により、パニックになって嘔吐したところも二人には目撃されてしまった。
まさか自分がヒロインならぬ、ゲロインになってしまうとは・・・一生の不覚である。


「あんまり無理すんなよ・・・と言ってやりたいけどよ、お前が平気なら、皆を助けにいこうぜ!俺らがここにいることからして、皆USJ内にいるだろうし!攻撃手段少ねえ奴らが心配だ!」

「あーうん、でも・・・」


切島の提案に言葉を濁して、ちらりと爆豪を盗み見た。


「行きてぇならお前らで行け。俺はあのワープゲートぶっ殺す!」

「はあ!?」

「(ですよねぇ・・・)」


このあと爆豪たちは、中央の広場まで戻って、緑谷たちに合流するはずだ。


「敵の出入口だぞ。いざって時逃げ出せねぇよう元を締めとくんだよ!モヤの対策もねぇわけじゃねぇ・・・!」


そう、この爆豪という男は本当にすごい奴なのだ。たった一度交戦した黒霧の弱点に、おおよその目星が付いているんだから。
改めて爆豪の有能っぷりに辟易とするが、それと同時に安堵する。彼と一緒にいれば、大概のピンチは乗り越えられるような、そんな心強さがある。
そんなことを思って肩の力をぬいた時、不意に強子の後頭部が何者かに掴まれ、地面に顔を叩きつけられた。


「いッ!?」

「ペチャクチャだべりやがって!その油断が・・・」


無色透明な姿をしたヴィランが強子を押さえつけ、手に持ったナイフを振りかざす。
それに気づいて、慌てて抵抗しようとしたが―――

BOOM!!

その前に、爆豪が透明ヴィランの後頭部を掴んで爆破させていた。
わぁ、すげぇ反応速度・・・。


「つーか、生徒(おれら)にあてられたのがこんな三下なら、大概大丈夫だろ。けどよぉ・・・」


ヴィランが強子の上からどかされたので、強子がのそのそと起き上がると・・・爆豪がものすごく、強子を睨んでいた。


「おまえはッ、なめとんのかコラッ・・・!気ィ抜いてモブ敵に後ろとられてんじゃねーぞッ!戦場で油断すんな!!そもそも、お前さっきのはどういうつもりだ!?ヴィランの目の前でボンヤリしくさって、戦いが嫌だとかアホぬかしてよぉ!そんなんでヒーロー目指してるとか、ヒーローなめてんだろォ!ああ!?」

「(ですよねぇッ!?)」


ある程度は予想していたが、やはり、すごい怒っている。
当然だ。ヴィランに囲まれているという、命にかかわる緊迫した状況で、強子は足手まといでしかなかった。
敵前で放心していたり、戦うことを拒んだり。ヒーローにあるまじき行動だったろう。
最悪、二人にも被害が及んでいたかもしれない。


「・・・ごめん。確かに、爆豪くんの言う通りだ。私には、覚悟が足りてなかったみたい。ヴィランが、戦うことが怖くて・・・二人に迷惑をかけちゃった」

「だったら、ヒーローになるの止めちまえ!!」

「な、おい爆豪ッ!」

「三下ごときにビビッて足引っ張るような奴、サイドキックにもいらねーんだよ!」


反省の色を見せる強子に対しても、爆豪はあたり強く責め立てる。
そんな二人を、切島はハラハラしながら見つめた。
心が折れたところに、こんな言葉を投げられてしまえば、本当にヒーローを志すことをやめてしまうんじゃないか・・・?


「私は・・・ヒーローに、ならなきゃいけない」

「「!」」


その言葉には、彼女の強い意志が感じられた。
彼女は、爆豪でも切島でもなく、ただまっすぐに前を見据えていた。


「死ぬのは、怖い。すごく怖い。だから、ヴィランも怖い」


強子の魂に刻み込まれた『恐怖』は、この先もきっと消えてはくれないだろう。
それほどまでに、怖かったのだ。


「・・・だから、私がヒーローになるの」


あの時、理不尽に殺されてしまった、可哀そうな“私”を想う。
救けを求めて伸ばした右腕は、何も掴めなかった。誰にも届かなかった。そして、“私”は死んだ。
力のない弱い人間は、力がある強い人間の救けがなければ、生き残れないから。

だから・・・強子のように力がある強者が、ヒーローにならないといけない。ヒーローになって、力のない弱者を救わなくちゃいけない。
強子だって怖いと感じるけれど、強子がやらずして、いったい誰がやるというんだ。


「多くの人々を恐怖から守れるヒーローになるんだ。ヴィランから人を救って、いっぱい救って、救いまくって・・・ヴィランに怯えることがない世界にしたいの」


救けを求めてもがいている人の、その手をとって、救いだす。
そんなヒーローになりたいんだ。

あのとき、“私”の右腕は誰にも掴んでもらえなかったけど・・・その右腕を掴んで引っ張り上げられるようなヒーローに、私――身能強子がなるんだ!


「ヒーローになることを諦めたら、きっと私は、後悔しながら生きることになる・・・!」


こうしてる今も、世界のどこかで“私”のような可哀そうな被害者が、救けを求めているかもしれない。
救われなかった人の気持ちが解る強子には、救わずにはいられない。
無力な人間の弱さを解っている強子だからこそ、救うことに使命感を覚えるんだ。


「ヴィランが怖くても、私はヒーローになるよ!!幸い、ヴィランと戦えるだけの『力』を授かってるわけだしね」


きっと、この優良個性が強子に与えられたのは、強子の願いを実現させるために、必要なものだからじゃないだろうか。
そんなメルヘンチックな考えに自嘲的な笑いをこぼし、強子は爆豪へと視線を向けた。


「ありがとう」

「はぁ?」

「爆豪くんのおかげで、思い出せたよ。自分が『誰』なのかを」


私は、身能強子だ。
無力だった前世とは違う。転生した私には、ヒーローになれるだけの力がある。


「自分がどうしてヒーローを目指してるのかも思い出した」


この人生は、弔いだ。
無念に殺された“私”を想おう。
きっと“私”のような可哀そうな人を救い続けることでしか、“私”の魂は救われない。
強子がヒーローになって、一人でも多くの被害者を減らせたのなら、“私”の死にも意味があったのだと思えるはずだ。

そりゃ、ヒロアカの世界に生まれたからには雄英に行きたいって、ミーハー心があったことは否定しない。
でも、それ以前に・・・強子がものごころついた時から、ずっと心に決めていた夢があるじゃないか。


「私はヒーローになって、たくさんの人を守るんだ!これだけは、ゆずれない!!」


夢は、現実に。

言い忘れてたけど、これは私が最高のヒーローになるまでの物語だ。










==========

通り魔だとか、変な事件って、意外と身近なとこで起きてたりします。他人事だと思わないで、みなさん気を付けてください。

それから言い忘れてたけど、これは夢主に全力で苦難を与えてプルスウルトラさせることを楽しむ、管理人の趣味で書かれた物語です。


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