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宇宙人









暑い暑い夏休み

俺はばあちゃん家にあそびにきていたのだけど、生意気な幼馴染みに呼び出されて神社に来ていた。
長い石段と紅い鳥居を抜けるまでにセミに二度もぶつかられたのは運が悪かった。樹が覆いしげっているので仕方ないのかもしれない。どれも長寿な樹ばかりなのかどっしりしていて、藁人形が目立つ。きょろりと見回しながら進めていた足を止め、もう一度確認するために後ろ向きに歩いた。


わ、藁人形おる…!


ある、と言うべきだろうか。

それよりも一気に気温が低くなった様に思えて身体が震えた。
夏だというのに緑のしげる神社は涼しく、やけに静かにセミの鳴き声だけ響かせている。さらに両腕をさすった、さむい。



カーン―…カーン―…



お、音きこえてる…

明らかに藁人形が関連する音にきこえるんだが、あえて疑問にするとこの金属同士をぶつけるような音はなんだろう。

こんな真っ昼間から金属バットでの打ち合いだろうか、はたまた刀でも造っているのだろうか。



「あんなやつっあんなやつっ、ふん、ふん、ふん」



あちゃあ。

紛れもなく丑三つ時のお祈りだった。
藁人形を五寸釘で樹に打ち付けているその黒髪がボサァっとした人物は、高く金づちを振り上げる度に聞き取れない「どるぁっしゃ」などの掛け声をかけている。

揺れる黒髪のバサリとした感じ

降り下ろされる金づちのキレ

真っ白なティーシャツから伺える平らな胸からして、男だろうと直感が告げた。
最近の丑三つ時のお祈りは女性だけではなく、男性もやる人はいるんだなと感じさせられる光景だ。女性の丑三つ時とはちがう意味で恐怖を感じる。


「……はあ…はあ…」


おやおやおや 体力切れだろうか。
もさもさ長い髪の毛で横顔すら拝見できないが、目があったら合ったで困るので退散しよう。幼馴染みには悪いがこれはきっと俺の人生がかかった決断だ、どうでもいいとあしらえない問題だぞ。


「誰だ!!」

「ええええ」


嘘だろ 一歩も動いてないのにバレた。

樹の枝踏んでパキッとかもいってないのに、何でバレたのだろうか?気配か。

硬直して動けない俺をよそに、ずんずん樹の間をわってくるそいつ。
黒くむやみやたらに伸ばされた髪が、薄汚れた白いはずのティーシャツが、怖い。


「……あ、のっ」

「うああぁぁぁあん!聞いてくださいよお!!」

「……え」


すがり付かれた腕が悲鳴をあげているけど、相手の握力はなかなか弱まらないので「聞きます聞きます」と必死に頷いた。

痛い、痛すぎる。