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バーテンの綺麗な大学生くん2









信じられない課題やってきたのに忘れた。


そういう大学の友人はおれの論文を取ろうとするから信じられないのはお前だと思った。

じぶんの論文を死守するように抱きかかえ、ほかのやつの論文を取ろうとするやつの奇行でにぎわう周りにしぜんと笑顔になる。

大学は嫌いじゃない。じぶんの家で一人でいるより、この賑やかさでいろんな悩みが紛れる。

「穂住」ほずみ、と呼ばれた名前にはーいと返事する。


「おまえ来週の新歓コンパ参加するよな」

「するよー」

「菅野江も来るらしくて、賑やかになるかもな〜」


菅野江?なまえで顔が浮かんでこないが、きっと新入生だろうと解釈して頷く。


まさかカンノエくんがあいつだったとは…。







「「「カンパーイ!」」」


わいやわいや、予約していた居酒屋の土間ではじまった新歓にはじめっからテンション駄々上がりだ。

バーではできないこの盛り上がり、大学ならではのノリに気持ちが浮つく。
ビールを一気してお代わりを頼むと友人たちも負けじとお代わりをするから、これは酔いつぶれて誰かの家に上がり込む覚悟をせねば。

むこうの卓でなにかおおぉっと歓声があがって、向こうもいい飲みっぷりのやついるんだなあと誰かが言う。


「なあ穂住、お前“なおちゃん”と別れたなら今日のコンパでしっかり捕まえろよ!」


ばあん、背中を叩かれて苦笑しかできない。

なおちゃんは男だと知っているひとは、この中に一人もおらず。おれがゲイだと知っているのも自分のみ。


「こいつなおちゃん引きずってるもんなあ」

「もう引きずってはないよ。いい人いたら行くし!」


バーでのみの、おともだちは、とっくに大学をでたような社会人が多い。

それは大人だからこその懐の広さというか、そもそもゲイだから俺がゲイだって可笑しくない。普通に扱ってくれる。
大学みたいに学生の延長では、他人と違うことがまだ少し受け入れられないような気がする。言えないでいるのは申し訳ないが、それもこれもみんなが好きだから言えないのだ。


「どうだ、良い女いるか!?」


あの子は、この子は、と色んな女子と喋らされて名前すら覚えられないんですけど。

お節介な周りのやさしさに、荒んだ心が和む。


「もういっそ、男とかどう!?」


そんな台詞と、目の前に差し出された男を見るまでは。


「え……!」

「あっ…」


どうも。ぺこりとしたその人の右耳にはピアスが光っていて、えろい。

私服で雰囲気はがらりと変わっているが、バーテンのお兄さんはにっこり笑うとおれの手元のお酒をとりあげた。


「飲みすぎると、また泣き上戸になっちゃうよ」


まわりが驚いたように、知り合いかと聞いてくるのに焦りを感じる。

だめだ、俺があの場にいってることは、ばれてはならないことなのだ。
急いでお兄さんの手を取り、店の外まで連れ出す。後ろで駆け落ちするならお金置いてけーなんて野次がとんできたけど、荷物全部置いてるから帰ってくるに決まってんだろ!

けっこう飲んでたから急に動いて動機がはげしい。


「あ、あの…はあはあ、」

「大丈夫ですか?なんて、お店じゃないから敬語要らないか」


大丈夫?と言い直しておれの背中をさする。

綺麗な顔して優しさまで兼ねそろえているのか、物腰柔らかな声音にちがう意味で動機がおさまらない。


「あの、俺があの店通ってること、言わないで」


きょとんとする綺麗な顔。あの店で見るより、幼く見えた。


「じゃあ、連絡先教えて?」


なんて、と言いながらiPhoneをチラつかせた。

昨日おれが言えなかったことばが、相手の口からでてくるなんて。酔いが回って幻聴が聞こえてきたのか?驚きと勢いでiPhoneを取り出したおれは欲望には忠実だなと思う。



(おれより二個下のえろいお兄さん)