小説 | ナノ
life -FE -@
※life -DC -(710+ヴィンセント)の続き?です。
 魔物退治2日目の3人の話。


「んで、昨日は二人でばんばんやっつけたんスけど、
俺はあっちこっち動いてもヴィンセントは全然動いてなくて、これが大人の余裕ってやつかーって思ったんスよ!」
「……そうか。でも動かないのはヴィンセントの武器も関係していると思うぞ」
「でも百発百中ッスよ!俺、敵に銃を使うやついたけど味方にはいなかったからヴィンセントがすっげー格好よく感じるんス」
「……銃を持った敵と戦ったことがあるのか。……当たったりはしなかったか?」
「かすったくらいかな?そんなの俺の足があれば余裕ッスよ!
あ、でもヴィンセントの弾は避けられる自信がちょとないかもな。なんたって百発百中だからな!」
「だそうだぞヴィンセント」
「…………」

俺がそう言えば、ヴィンセントは僅かに顔が曇った。
いくらヴィンセントでも外さないなんてことはない。
けどティーダはまるでヴィンセントが外すことなんてありえないとばかりの話ぶりだ。
昨日合流した時から、ティーダはよくヴィンセントの話をした。
その殆どはヴィンセントを褒め称えるもので、その度にヴィンセントは居心地悪そうにするのが少しおかしかった。
誉められ慣れてなのだろう。そしてティーダのように無邪気な仲間もいなかった。

ユフィは……無邪気とは程遠いからな。

ヴィンセントには耐性がないのだ。
だから結局、昨夜は話途中でヴィンセントは逃げていってしまった。
気恥ずかしいとか、どうしたらいいのか分からないという気持ちは分かる。
自分もティーダに初めて会ったときはどう接すればいいのか分からなかった。
戦い慣れた歴戦の戦士たちの中で、一人スポーツ選手で剣もあまり握ったことないという太陽のような笑顔を見せる少年。
過酷な戦いに、技術だけでなく精神もついてこれるかと思ったが、むしろ精神はよほど俺より強くて支えられるばかりだった。
ティーダは戦士たちが戦い生きていくうちで捨ててきたものを全部持っていた。
それが俺にはひどく眩しくて、焦がれて、どう接したらいいのか分からなかった。
けど、ティーダが笑顔で近付いてくるのを避けつづけるのも無理な話で……気づけば自然にこうして隣にいるのが楽になった。

まだどこか違和を感じることがあるが、それはおれ自身の問題だ。
ティーダはいつまでもそのままでいてほしい。

俺がこう思うのだから、きっとヴィンセントもティーダの側に居続ければいずれ慣れるだろう。
ティーダは拒んでいないのだから、己が受け入れればいいだけの話だ。

「それにしてもヴィンセントはクールだよなぁ!どうしたらそんな風に落ち着いた男になれるッスかね?」
「いや……なろうと意識したことはないぞ」
「素ってことッスか?」
「こう見えて歳を食っているからな。ティーダももっと歳を重ねれば自然と落ち着くだろう」


二人が話しているのを見ながら、そう言えばヴィンセントが珍しく饒舌なのに気づいた。
俺たちの話は半分どころ聞いてなかったり、会話を合わせようとしてなかったり、気遣いも……ないわけではないが殆どが適当だ。

言葉に過剰な優しさを持たない奴だと思っていたが、ティーダへの応対には優しさが見え隠れしていた。

早速、ティーダにほだされたかと思うと僅かに複雑な気持ちになった。
あっさりとヴィンセントの内に入り込んだティーダをさすがだと思うし、ティーダに対して心を許している様子を見せるヴィンセントにもよかったと思う。
けれど、長年仲間を続けてきた俺たちよりも親しげな様子とか不公平じゃないかとか、ちょっとティーダに過剰に優しくないかとか思ってしまう。

いいことの筈なのに、なんとなく理不尽だという感情とさっきからティーダに放って置かれている気がして……なんとなく、面白くない。

だいたいヴィンセントも適当なことをあまりティーダに吹き込むな。
ヴィンセントはクールというか……面倒くさがりだったり、色々抜けているところだてあるだろう。
本人は自覚がないかもしれないが、ぼんやりしてることだってかなりある。

それに、ティーダ歳を重ねても余り落ち着きは出てこないだろう。
親がジェクトだぞ。ティーダは怒るだろうから言わないが、この親子は非常に似てるんだ。
ティーダがヴィンセントのようになるはずがないし、なって欲しくない。
ティーダは元気に笑っているのが一番似合っている。
俺やヴィンセントみたいに笑いたくてもうまく笑えない大人になるな。

「ティーダはそれでいい」

無意識に漏れた言葉に、はっとした。
目の前にはきょとんとした顔のティーダと、無表情のヴィンセントがいて、二人して俺を見ていた。

俺は今、なんて言ったんだ?

「クラウドは金髪の方がいいッスか?」
「……金髪…?」

ティーダの言葉に疑問符を浮かべれば、ティーダは自分の髪を摘まんだ。

「そうッス。そろそろ違う色にしてもいいかなーって話してたんスけど……」
「……染める?その色変えるのか?」
「地毛じゃないッスからね。気分転換に変えようかなって」

そう言えば、髪の色は染めていると聞いたな。
金髪じゃないティーダなんて想像できない。
いや、ジェクトは黒髪なのだから本当はブルネットなんだろうが……。

「お喋りはそろそろ終わりだ。洞窟が見えた」

ヴィンセントの言葉に前方を見る。
そこには最近になって発見されたらしい洞窟があった。
こんな森の奥まで人が来ることはないから、発行されているものではなく手書きの地図にしか載っていない洞窟だ。

昨日の魔物はヴィンセントの話ではまだ頭を見つけていないらしい。
技量的に頭だと思える魔物と遭遇はしたらしいが、同様のレベルの魔物に囲まれ、頭はまだ別にいると判断したらしい。

この辺で巣穴となっているとしたらこの洞窟だろうとリーブから情報を得た。
赴いた洞窟は思った以上に大きく、奥は見えない。

「広そうだな」
「ああ、慎重に行こう」

俺の感想にヴィンセントはそう答えるとすいっと顎をしゃくった。

「行くぞティーダ」
「うッス」

ヴィンセントよりも前にでて、俺が先頭になる形で洞窟に入る。
俺の後ろにティーダが続き、ヴィンセントが殿になる陣形をとり、奥へと進んでいく。

途中、正面から魔物が襲ってくるのを叩き伏せながら進むが、厄介なことに道がいくつも別れていた。
どうするかと言っても、一つ一つ道を試していくしかない。

「……どこから行くか」
「端からでいいだろう」

俺とヴィンセントがそう言い合い、右端から行くかと足を向けたがティーダは一人ぼんやりと立っていた。

「ティーダ?どうした?」
「え?あ、いや……誰かに呼ばれたような気がしたから……」

そう言ってティーダはじっと真ん中の道を見ていた。

「気になるのか?何が聞こえた?」
「いや……風の音かも。いいッス。行こう」

ティーダは後ろを僅かに気にしながらも、俺達のほうへと駆け寄った。
気になるならそちらに行くべきかとも思ったが、『ほら、行こぜ』と言ってティーダが俺の腕を引っ張ったので、俺達はそのまま前へと進んでいく。
洞窟ではあるが、なぜかぼんやりと辺りが明るかった。
それゆえに、ライト一つでも十分辺りを確認できる。

「……なんか……変な感じッスね」
「そうだな。明かりがないのに、周りが見える。……ティーダ、浮つくなよ」

きょろきょろと辺りを見渡すティーダに、集中しろと軽く小突くが、ティーダは歯切れ悪く『……わかってる…』と答えた。
ティーダは相変わらずあたりを伺いすぎることに夢中で、俺の話なんて聞いてなさげだった。

「どうしたティーダ。なにか気になるのか?」
「いや、昔いたところとなんとなく似てるなって思っただけッスよ」

ヴィンセントの問いにそう答えたティーダは、『ごめん。集中するッス』と笑った。
それがなんとなく、面白くない。

bkm
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