「それで、オイラの父さんは立派に戦って村を守ったんだ!」
「へぇ……すげー立派な親父さんなんスね」
「うん!オイラの誇りで、目標なんだ!」
得意げな顔で言うレッド]Vとそれをにこにこしながら聞いているティーダをアタシはぼんやり見つめていた。
ジープで移動している今、乗り物酔いのする自分は雑誌なんか読むこともできやしない。
乗り物酔い仲間のクラウドはジープに乗らないで隣をフェンリルで走ってるし。
ジープに乗るのを頑なに拒否したのは絶対に乗り物酔いするからだ。
どーせティーダに格好悪いところ見せたくないーとか考えてんだよっ!
あーあ。アタシはこんなに暇だって言うのにさっ!
でも、あまりにも暇だけれど、レッド]Vの父親自慢話大会には参加したくない。
なにしろレッド]Vは本当はあまり父親の話をしない。
それを初対面のティーダに嬉しそうに話しているのだから……なんともあそこには入りにくい雰囲気があるんだよ。
「ヴィンセントぉー……暇ー……」
「ティーダたちに混ざってくればいい」
「ええ?やだよぉ。なんか二人の世界作ってて入りにくいんだもん」
アタシがそう言えば、ヴィンセントもフムと頷きながらティーダとレッド]Vを見つめた。
なんか二人は今度はじゃれあいながら笑ってる。
「てゆーか、レッド]Vがあんなにティーダに懐くなんて思わなかった」
「そうだな。……ティーダだからだろう」
「なにそれ。なんでもかんでも『ティーダ』だからーで片付けるのはよくないわよぉ?」
クラウドといい、ヴィンセントといい。
なんでだか知らないけど皆ティーダに甘いんだから。
ティファもティーダに甘いけど、あれは家のことを散々ティーダに頼んでるから……まあ当然よね。
あと、クラウドもどーしようもない理由で甘くなっちゃうだろうけど。
あーあ。イケメンのくせに。
「もしかしてヴィンセントもクラウドと同じなの?」
「……?何の話だ?」
「………なんでもないっ!」
アタシはよろよろと立ち上がると、ジープの端っこの方へと移動した。
そっから顔を出せば、風が肌に当たっていき、幾分か心地がいい。
なんでジープには日よけがついてるんだか。
お陰で風が入らないじゃないの!!
「ユフィ、危ないよ。落ちるよ」
「平気よ。落ちない落ちない」
レッド]Vの言葉にアタシは笑ってそのまま外へと少し身を乗り出した。
そうすれば見えるのはサングラスつけてフェンリルを走らせているクラウドだ。
フェンリルならジープより断然早いのに、後ろを走っているのは後方からの魔物とかの襲撃を警戒してるんだろうな。
その警戒の理由はなんですかー?
愛しの愛しのティーダがいるからですかー?
まあ、違うだろうけど。
それもあるだろうけど、ちゃんと仲間のアタシたちの心配もしてるんだろうけど。
「はぁ〜…暇。おおーい!クラウドー!」
そう言って手を名前を呼んで手を振れば、クラウドはちらりとこちらを見てまたすぐに前をみた。
こんにゃろう。名前を呼んだのがティーダだったら絶対に別の反応するくせに。
「ねえティーダ。こっち来なよ」
だったらその反応の違いを楽しんでやろうかと思ってティーダを振り返れば、ティーダはもとよりこっちを見ていたらしく突然に振り返ったアタシにびっくりしていた。
「え。なんでッスか?」
そわそわして、あっちこっち見出したティーダ。
変なの。なんでって今アタシ、クラウドの名前呼んだじゃん。
「クラウド見えるよ。ほらほら!手でも振ってやりなって!」
にやにやしながらそう言えば、ティーダは困ったような顔で私を見て、視線をあちこちへと彷徨わせた。
変な反応のティーダに何事かと思うが、ティーダは『ちょっと酔ったからいいッス』といってレッド]Vの背中に顔を埋めてしまった。
「ティーダ大丈夫かい?」
「んー。大丈夫ッス。背中ちょっと貸してくれよ」
「仕方ないなぁ。特別だよ」
そんな風にお兄さん気取りなのか、レッド]Vは得意げな顔をしてる。
だけど私はあまりにも不自然なティーダの態度に眉を顰めた。
ユフィちゃんをナメないで!
乗り物酔いかどうかなんて一目見れば分かるんだから!
伊達に乗り物酔いしてないわよ!
虚しい。
まあ、どっちにしてもティーダは乗り物酔いしてなんかないだろう。
顔色だって普通だし。
「んー?」
私はぐいっと外へと首を出して、フェンリルでもくもくと走り続けるクラウドを見る。
そういえばさ。
出かけるときって、クラウドはティーダをフェンリルに乗せてなかったっけ?
ティーダだって、フェンリルに乗るのは好きだったはずだし。
「んんー?」
一人で外をフェンリルで走るクラウド。
ジープの中で、じっとレッド]Vに埋もれてるティーダ。
これは……なにかあったのかなぁ?
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