小説 | ナノ
成分は夢と希望とあと、ちょっとの妄想。B
男四人でテントの外に出て、顔を向き合わせながら輪になって座っている。
バッツを除く三人は神妙な面持ちで、その中でもさっきからずっとラッキースケベの能力を如何なく発揮しているスコールはすでにグロッキー状態だ。

「なんでこんなことになったんだ?」

クラウドの言葉に、バッツが目を輝かせ、興奮したように腕をぶんぶんと振る。

「気合だよ気合!」
「気合で女になれるわけないだろう……」

スコールが力なく答えるが、バッツはうーんと頭を傾げて『じゃあ、夢が叶ったんだ!』と嬉々としていった。

「おいおいバッツ。それって誰の夢だよ」
「誰のってジタンだろ?女の子欲しかったんだろ?」
「俺のせいにするなよ!俺は別にティーダにレディになって欲しいなんて思ってないっつーの!!」

ジタンがそう反論するが、バッツはへらへらと笑って、『女の子、できて良かったなー』なんてまるで話を聞いていない。
ジタンは再度違うと釈明しようと思ったのだが、ばさりと入り口が開いたので振り返った。

そろりとでてきた人物は若干の不機嫌さを顔に滲ませて、唇をとがらせてる。
その様子が思った以上に、衝撃的で……というか、平たくいえば可愛らしくて、ジタンは洒落にならないと頭を抱えた。

「スコールの服、メチャクチャぶっかぶかッス……」
「普段でも袖、余ってるじゃんか」

バッツの心のない言葉に、ティーダはじとりとバッツを睨んだ。
でもその顔は拗ねているような感じで、可愛いとしかいえない。

どうしてか男から女の子になってしまったティーダは、その体も普段よりも小さいものに変わっていた。
男としてもさほど大きいほうではなかったからか、女の子としての体つきはティナよりも少し小さいくらいになっているようだった。ただ、体のわりに胸部が発達しているようだが。

そんな体の小さくなってしまったティーダだ。
自分の服をちょうど良く着られるわけもなく、そもそもがティーダの服は前ががっぽりと開いているデザインだ。男ならともかく、女の子がそれ一枚でいていい服じゃない。
かといって、ティーダの3rdフォームは上着すらないものだ。

ならば仕方ないと、今日はたまたまスコールが3rdフォームを着ていたため、普段の服がある。
多少でかいけれど、前がしめられるのだからとティーダにインナーと上着を貸したのだ。

そしてその場で躊躇わずに着替えようとしたティーダに、クラウドとスコールとジタンは、慌ててバッツを引きずってテントを出た。
さすがに女になったからといって、突然に女らしさがでるわけではないらしい。

「袖、折っていいッスか?」
「……レザージャケットを折るのか」
「でもこれじゃ剣もてないッスよ」

確かにティーダは袖をぶらぶらと余らせてしまっていて、どう考えても剣を持って戦えるようではない。
ティーダは『スコールが腕が長いのが悪いんだ』とかぶつぶつ言いながら、上着を捲くる。

「さて……どうする?」
「え?なにがッスか?」

クラウドの言葉に、ティーダはことりと首を傾げた。
その様子はいつも通りの行動だったけれど、女の子というだけで柔らかさが倍増していて……目に悪い。
そんな風にジタンは感じたが、恐らくいつもの男の姿でも自称クールの二人組みは同じように見えているのだろうと思った。

「どうするって、今後の行動だ。お前がその状態になって、予定通りに出発すべきかどうかということだ」
「いいんじゃないッスか?とりあえず、原因もわかんないし……様子見ようぜ」
「マジかよティーダ……。お前、もっと混乱すべきだと思うぜ?」

普段どおりに行こうというティーダにジタンは顔を顰めた。
なんだろうか。性別が変わったというのにこの順応性の速さは。

「いやだってさ。異世界に召喚されてるだけでももう、色々と謎だろ。いまさら性別変わったくらいじゃ俺は驚かないッスよ!!」

そう言って拳を握っていってはいるが、どうやらそう思い込もうとしているらしい。
その涙ぐましいプラス思考に、これ以上腫れ物に触るように扱っては逆効果かと、クラウドは息を吐いた。

「そうだな。とりあえず暫く様子をみよう。ティーダ、少しでも気がかりなことがあったりしたらすぐに言えよ」
「了解ッス!」
「それじゃあ、出発の準備をしろ」

クラウドの言葉で全員立ち上がり、各々片づけを始めた。
今の場所から南下していくのだが、赴いたことのないエリアゆえにいつも以上に注意して散策していかなければならない。

「よっしっ!準備完了ッス!出発ッスよー!」

元気よく飛び跳ね、ティーダが先導するように走り出す。
いつも通りのその様子に、クラウドはそっと息を吐いた。
どうやら、僅かばかり緊張していたらしい。

けれどティーダが明るく振舞っていてくれることで、初めて見たときよりは動揺が収まっている。
ともかく前に進むために、先導するティーダの後を追おうと一歩踏み出した瞬間、前を走っていたティーダが蹲った。

「……ティーダ!?」
「どうした!?」

蹲ったティーダに、クラウドとスコールが近づいた。
ティーダは胸を押さえるようにしてじっと蹲っている。

「あ……うう……」

そろりと顔を上げたティーダの目は潤んでいて、一体なにが起こったのかと身を屈めてティーダの目線にあわせた。

「ティーダ?どうかしたのか?」

クラウドがそっと頭を撫でながらそう問えば、ティーダは胸を押さえていた手を取り、ふぅと息を吐いた。
そしてぐっと唇を噛み締めると、蚊の鳴くような声で、ぽつりと呟いた。


「……走ると胸が揺れて超……痛いッス……」

その言葉を聞いた時の背徳感といったら、ない。
スコールはなんて答えればいいのか分からず、ただ目線を逸らした。
/
bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -