金の入日に手風琴

灰色の石畳の広がる広場でひっそりと、手風琴を奏でていた。帽子を深くかぶり、シャツの襟を立てて。
過去のあの頃の記憶なんて、忘れたい。
青春を謳歌するだなんて笑っちゃう。
ただそっと、手風琴の音色にその記憶をのせて影絵のような街に音を響かせた。

「―――綺麗な音ですね」

ふと、いつの間にか横に一人の男がいた。風貌からして兵士といったところか。
ありがとう、とだけ呟いてその場を後にしようとしたが何を考えたか、この男は手首を掴んできた。

「日が暮れてきているので家まで送ってあげましょうか。」
「結構。僕の心配なんていらないよ。」
「最近物騒なんですよ…お嬢さん?」

お嬢さん、と言われ、反射的に男を睨みつける。事実、「私」は女だけど…もう女として生きていくのはつらい。だから「僕」
なんていう皮を被った「男」として「私」は生きているんだ。

「僕は女じゃない!」
「随分と透き通った綺麗な声ですね。まぁ稀にそんな男性も居るでしょう。ですが…女性らしい体型が隠れてませんよ。」
「ばっ…返せ!」

胸に抱えていた手風琴は取り上げられた。男は手風琴をまじまじと見る、側面に刻まれた自分の名前を指でなぞった。嫌、その名前は口に出さないで…。

「Mei...」
「その名前を呼ぶな!」

男の手を振り払い、無理やり手風琴を奪い返した。刹那、男の表情は悲しみを交えた笑みへと変わる。

「…私のこと、覚えてませんか?」

その言葉に心臓はドクンと跳ね上がった。「私」は貴方のことを知っている。でも「僕」は知らない―――。


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…続きませんw
某所に乗っけた産物(´艸`)






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