意識が、深い闇から光へと無理矢理に浮上させられる。ぐらぐらする頭を押さえ目をあけると、目の前に映る、の..は.....
「......っ!」
「悪ぃ、起こすつもりはなかった。」
「....シズ、ちゃ.....」
「大丈夫か?」
優しく、そういつもの態度からは予想もできないような優しい態度でシズちゃんが俺の髪を撫でる。あぁ、この温もりは間違いなくシズちゃんだと思わずその指に触れそうになって思い出す。
俺が意識を飛ばす前に聞いた、死の宣告ともとれるような衝撃の告白を。
「.......あ....あぁ....」
「.....臨也?」
「.....っ大丈夫だから、触らないで.....」
俺の言葉に、シズちゃんの暖かい指が少しずつはなれて行く。そう、触らないで、でも離れないで、触らないで......。無意味とも言えようその感情がぐるぐると俺の心をめぐり巡って、思考をぐちゃぐちゃにかき乱す。
シズちゃんは帝人くんが好き。それはどうしようもない事実で。第三者からみて、帝人くんもきっとシズちゃんのことが好きで.........。そんな二人の関係にどうして俺が入りこめようか。
.....どうあがいても、なにも変わらないならいっそこんな気持ちなど捨ててしまえばいい。そう思う、のに。
「.......だから泣くなって....」
「......っ、やめ......」
シズちゃんの大きな体が俺を包み込む。優しく、そう痛いくらいに優しく。だから、涙なんて止まるはずないのに、当のシズちゃんは俺に泣くなと言う。
悲しくて、辛くて、嬉しくて、痛くて.....。悲鳴を上げる心に従って、俺は枕元に置いておいたナイフに手を掛ける。
しっかりと、両手でそれの柄を握り、シズちゃんの腹目がけて渾身の力で降り落とす一撃。
どさり、とシズちゃんが仰向けに倒れた。
「......っ、」
「もう、嫌になるよ。本当.....」
「それはこっちの台詞だ。せっかく優しくしてやってんのによぉ、臨也。」
「......全然刺さらないね」
「分かりきったことだろ、今さらなにをやってんだ。」
パキ、と軽い音を立てて割れたのは俺のナイフの方だった。俺の心のように、粉々になって散らばったそれの一かけらを拾い、握りしめる。
シズちゃんの腹の上にまたがったまま、無意味とは分かっていても叩くことを止められない拳。
何度も何度も叩いて、シズちゃんの肌が少し赤くなったところで俺の両手はあっけなくシズちゃんの手によって固定される。
握り締めた掌から伝う、赤い血が俺の手首を伝って、ポタリとシズちゃんの頬を染める。
数滴落ちた血痕の上に、新たに涙が降り注いで。赤い涙と化したそれが、シズちゃんの頬を流れた。
「.......いつもにもまして意味わかんねぇな。ついに頭、おかしくなったんじゃねぇか?」
「.....ねぇ、.....」
「あぁ?」
シズちゃんが怪訝そうな声を上げたとき、窓から入り込んだ風が冷たく俺たちの間を通り抜けた。
なんで閉めてないんだよ、とどこか冷静な心が目の前の男に悪態をつく。緩められた手から俺の両手が解放されて、静かに音もなく、その掌はシズちゃんの横に落ちた。
「なんで、君は.....」
「......おい」
折角伏せた顔をシズちゃんによって無理矢理上げさせられる。俺よりも一回りほど大きな手が俺の涙をぬぐうものだから、少し目の前の男に意地悪をしてみたくなる。
無理矢理に閉めた心の扉を押さえる手を、少し笑って外した。
「.......なんで、きみは......俺のことを見てくれないんだい?」
「.....いざ、........」
「本当、腹立つなぁ.........」
吐き出された俺の声は、悲しいくらいに震え、夜の闇に溶けて、消えた。
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なにがしたいのかわからない(^p^)/
とりあえず次で終わります←
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