「ぅうわぁああああ!!そこの人ぉぉぉお!!その紙拾ってぇぇぇえええ!!!」





昼休みに昼練から教室に戻ろうとしたら、後ろからそんな声が聞こえてきた。


振り返りもせずに、持って生まれた視野の広さを使ってその子を見てみたら、あれ?こんな子うちの学校にいたっけ?って思うくらい可愛い子だったから、改めて振り返って見てみたら、今度はその子の顔が真っ青になって、「わぁあ!!やっぱ拾わないでぇぇぇええ!!!」なんて叫んできたんだけど、え?拾わないで?って言った?なんてその子の言葉を脳内で理解する前に体が動いてしまい、風にひらひらと飛ばされてきた紙を軽く跳んでキャッチした。


……ら、それに描いてあったのはオレの絵、だったわけで。


「え?オレ?」


一目で自分だとわかるような上手さの絵。描かれているのは構図からして恐らく後ろ向きにパスを出した瞬間。
写真のような出来のそれに息を飲む。

目の前にまで来たその子は、ああやってしまったと言わんばかり。顔が真っ赤になって、硬直して動かなくなって。

ただ、俯いたってオレにはその顔がよく見えるから、や、モチロンわざとじゃねぇんだけど!眼が勝手に追っちまっただけで!盗み見とかじゃねぇんだけど!この場合は!


そしたら俯いた顔がやっぱり可愛い、と言うか、真っ赤なその顔が綺麗で。そいつが同じクラスの水無月だって気付くのにしばし時間を要した。






これが水無月との出会いだって言ったら、真ちゃんは笑うだろうか、それともいつものように不機嫌そうに鼻を鳴らすだろうか。




……多分後者だろう。
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