「水無月、おーいっ、授業終わったよー」

「ん…え?」

「相変わらず豪快な寝方すんね。」

「…うっさい。」

「また遅くまで絵描いてたの?」

「…。」


あの日、顔を真っ赤にして俯いた可愛い女の子は、今ではオレの可愛い可愛い彼女だ。絵を描くことが趣味の水無月は、時々遅くまで絵を描いては夜更かしをする。そして割と豪快に授業中居眠りをする。


「身体壊さないように、ほどほどにね。テストもあるし。」

「…私より良くないくせに五月蝿いよ。」

「うっわ痛いとこを。傷ついた。高尾ちゃん傷ついたなぁー」

「高尾!何をやっているのだよ!部活に遅れるぞ!!」

「ぅお!それは困った!宮地さんに鉄拳食らう!!」


廊下側の一番前の席で寝ていた彼女を起こして、ちょっとだけからかってやったら真ちゃんに少し大きな声で叱られた。ので、ポンと頭に手を置いて、また放課後ね、ってだけ残して教室を後にする。背中から「誰も部活終わるまで待ってるなんて言ってないし。」と聞こえてきた。

前を向いたまま盗み見た教室では、その場から動く気配のない彼女が再び机に突っ伏してケータイを取り出しているのが見えた。

なんだ、やっぱり待っててくれんじゃん、とにやけていたら真ちゃんが道端に落ちているアイスのゴミを見るみたいな目でオレを見ていた。

オレのまわりはツンデレだらけで、困る。


まぁ水無月の場合はデレの割合少なすぎなんだけど。眼鏡だって外してもたいして視力変わんねぇのに滅多に外してくんねぇし。あ、や、好きですよ?!眼鏡で髪適当に束ねてるカンナちゃんも大好きだけども!名前で呼ぶと怒るから心の中でしか名前で呼べねぇけども!





















「で、なんでオレまでお前らと一緒に帰ってるのだよ!」

「真ちゃん毎回それ言ってて飽きないの?」

「うるさいのだよ。」

「うちらがいないと一人寂しく帰る羽目になる緑間を気遣ってやってるのがわかんないかなぁー」

「ふん!お前こそ、オレがいないと高尾とまともに話せなくなるくせによくそんな口がきけるな。」

「うううううるさいのだよ馬鹿め!」

「水無月落ち着いてっ、口調うつってるから!」


帰り道は毎回、オレと水無月の間に真ちゃんがいる。真ちゃんと水無月は中学も、たしかその前も一緒だから、仲が良い。時々、嫉妬するくらいには。

時々ひきつりそうになる笑顔をなんとか保たせて歩く。あ、今水無月、真ちゃんの袖引っ張った。いいな、真ちゃん。あ、水無月笑顔だ。可愛い。真ちゃん、ずるい。





最初の頃は全く気にしていなかったのだけど、なぜだろう、最近気になるようになった。真ちゃんは言わずともがな身長が超高校級だから(や、もちろん身長だけじゃねぇけど)オレから水無月はすっかり隠れていて、オレは毎回わざわざ眼を使って水無月の顔を見なくちゃいけないわけで、正直それって結構寂しい。

コミュ力高いとか、言わなくても思ってることわかってくれるとか言われるオレだけど、そんなこと言われてるオレだけど、わかんないことだってある、わけで。



最近はまさにそれが、オレの彼女のことだったりする、わけで。


prev/ next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -