「うっわぁぁー?!」
毎日激しい練習に励む、誠凛バスケ部も、今日は午前中で練習が終わり、午後からは、休養に当てろということで休みになった。火神は前々から自宅に来たがっていた彼女を家に招くことにして、元々必要最低限のものしかない殺伐とした部屋を、前の日から片付けていた。
そしていよいよ部屋に上がった彼女の第一声が冒頭の台詞である。台詞というよりも、声にしかなっていないが。
「すっごー!大我こんなとこ住んでんの?!独りで?!うらやましー!」
「そんないいもんでもねぇけどな」
「んー、確かに独りで住むには寂しいくらいの広さかもねぇ。」
「言ったろ。親父が一緒に住む予定だったんだよ。」
「むーぅ。あ、そうだ!一緒に住んであげようか?」
「なぁっ?!」
にっこりと笑いながら言う水無月に顔が赤くなる。高校卒業したらそれもいいな、と考えていたことなどどうにも言えなくなって、火神はあたふたと言葉を詰まらせた。
「っそれは、だな!オレも、まだ高校生なわけだから…っ」
「……ふ、」
「あ?」
「…ふふ、冗談だってばー!大我かわいーっ!」
「な?!だ、騙したな?!」
「ちーがうよ冗談だよ冗談。本気にした?」
いたずらっ子のように笑う彼女に頭が痛くなったような気がした火神は、水無月を無視して飲み物を出そうとキッチンに向かった。後ろから、こらー逃げるなー、と聞こえたが無視した。
「待たせたな…。あ?あいつ…どこ行った?」
飲み物と軽めのお菓子を用意してお盆に乗せてリビングに運ぶと、そこには水無月の姿はなかった。
「…」
何故かとても嫌な予感がした火神は、お盆を無造作にリビングのテーブルに置いて、隣の部屋のドアを開けた。
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