征十郎は、私の天使だ。

救世主、と言っても過言ではない。













この見た目と、身長と、口調のせいで、幼い時から敵を作りやすいタイプだった。


小学生の時には、京都に生まれながら、東京出身の母の言葉を聞いて育ったがための私の標準語を、クラス皆に馬鹿にされ、「方言を誇らしく話してるなんて、田舎者みたいじゃないの。」と、心にもないことを口走り、生意気だと言って省かれた。


中学の時は、高い身長に目をつけたバレー部の先輩の勧誘を、大人しく「すみません。運動部に入る気はないので。」とでも言って流せばいいのに、「身長高いからってむやみに誘わないでくれます?そういうの迷惑なんで。」なんて返してしまったがために、しばらくネチネチと陰口を叩かれた。

それから、学年で一番派手だった女の彼氏が私に惚れたとかで。まぁ、例によっていじめが始まった。私が女物の香水の匂いがダメになったのは多分派手な女共に囲まれたせいだ。痛かった記憶と、臭かった記憶しかない。


高校に行っても、敵を作りやすい体質は変わらず、靴が無くなったり、教科書が無かったりなんてのが日常だった。中学でそんなものに慣れていた私には、ダメージは0だったのだけど。



「カンナちゃんって、なんで何されても平気なん?」

「アンタは私が鉄の女だとでも言いたいの?私だって辛いことくらいあるわよ?」

「でも、うちやったら、靴隠された時点で心折れてまうよ〜?カンナちゃんは、平気やんかぁ。」



私より随分低い身長の高校でできた友達は、やんわりとした京言葉の中で毒を吐ける、奇特な存在だった。だからこそ私と付き合っていられるのだろうけど。



「……中学の時もっと酷い目に合ってるから。この程度じゃなんとも思わないの。それに、こういうことは負け犬のすることよ。自分が私より弱いって、認めているようなものなの。だから陰でそんなことをするのよ。そんな人達を心の中で笑うのも楽しいわよ?」



私の演説めいた話を聞いて「うわぁ、カンナちゃんほんまえげつないわぁ。」とコメントした友達から目を反らして外を見ようと窓側を見たら。出席番号1番の位置に座っている男子と目が合った。話したこともなかったその人は、私を見るなり、恐ろしい程綺麗に綺麗に微笑んだ。














これが、征十郎との出会いだった。









征十郎が私に「僕のものにならないか?」と言い、私がそれを承諾して以来、私の靴も、教科書も、無くなることはなくなった。

征十郎が私のどこを好きになったのかはよくわからないけど、私が今征十郎を大好きだから問題ない。



征十郎、好きよ。

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