飽き反芻

飽き反芻_痛みと愛と呪縛 | ナノ
痛みと愛と呪縛


フワフワとした微睡を感じる。これが死ぬという感覚なのか
ブラックアウトしたはずの意識はいつの間にか白い空間の中にあって、手や足自分の身体が何処にあるのかわからない。
寝起きのような感覚にも似ているが、なぜか少し気持ち悪さがある。

―死んだら天国か地獄じゃなかったのか

とそんな非現実的な事を考えてフワフワと浮いているような感覚に身を委ねていると
無いはずの身体が拷問された時の非ではない程痛む感覚に陥った。
耐えられるようなものではなくてギャーと自尊心など気にしていられない程に叫んだはずだったが、
自分の声は響かず。身体のどこが痛いのもわからない。
何も考えられるような状態ではなく痛い痛いと脳が自分の意識とは関係なく痛いという言葉で侵食される。

何かがプチンッとはじける音が聞こえた。

脳の神経でもちぎれたのかと思った瞬間。
痛みが少し引いて全身が熱を帯びたように熱くなった。

「あ、、、、、っぅぁ」

自分の声が聞こえるが、声という声ではなかった。
そしてさっきとは違い自分の身体がある感覚がわかるが、それは到底生きた人間の身体ではないという事がわかる。
痛みに目を閉じきっていたが少し薄らと開けてみる。目は損傷していないのか、見慣れた部屋が見える。
最後は椅子にくくりつけられたままだったはずの私は、床に横たわっていた。

だが、それだけではない。

―なんで、何で生きてるの?

そう、私の身体からいや、腹からは本来中に納まっていないといけないはずの臓器が床に散らばっていた。
死んだと思ったあの時確かに私の腹には彼の手が突き刺さっていたが、それから彼は私の臓器を引きずり出したという事か。
なんて残虐なんだろうと思ったもののよく考えれば初めからそうだったじゃないかと思う。
が、今はそんな場合ではない。生きているのはいいがこんな状態で生きていたとしても起き上がることはおろか声すら出せないし、生きてる意味がないとすらいえる。

「 ウゥ」

徐々に気分が悪くなる。見た光景に吐き気を催したのか、何かがせりあがってくる。
しかし、食べ物を食べていないし、食べていたとしてもこれだけ臓器が散乱しているのだ吐き出すものもないはず。
そして、キリキリと骨が痛む感覚。

「いたぃ、、、」

自尊心を保ち、羞恥心を隠す相手も今はいないし、声も出せないのだからと。
つぶやいた言葉は以外にも音として外に出た。

「気、、もち、、わぅぃ」

せりあがってくる感覚は次第に大きくなり、キーンと耳鳴りまで鳴ってくる。
次の瞬間。

―ピシャ

自分の口から血が吐き出される。思わず手で床を押し上げて四つん這いになりオエオエとえずく。
何回かに分けて吐き出す血が次第に胃酸の味に変わり気持ち悪さは増すが、突発的な嘔吐感が収まり、
自分の現状に不可思議さを覚えた。

手が折れてない。

そう、私は自分の手で地面を押し上げている。腕は折れていないし、手には5本の指が生えている。
当たり前のことだけれど今さっきまで私は彼に腕はおられ指は残っている本数の方が少なかったはずだった。それが、今はすべて綺麗にそろっている。
それどころか、もうだいぶん前に怪我した後さえ綺麗さっぱりなくなっているではないか。

「どうなってるの」

それに返答してくれる相手はいなかった。


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