飽き反芻

飽き反芻_痛みと愛と呪縛 | ナノ
痛みと愛と呪縛


それから約2時間程、今まで彼に座らされていた椅子に座り、彼が入ってくるのを待った。
死んだと思っているのだから来るのかどうかは分からないし、入ってきたとしても死んでいる相手が綺麗な状態で座っていたら驚くだろうが、もう何日も前に此処が自分の家ではないことは理解しているし、此処が何処かわからないのでそうするほかないと言うか。。。
という言い訳を並べながら。

―ギュル

彼が入ってくるまで待っているつもりだったが、彼は私が死んでいると思っている。だとしたらいつまでも此処にいても入ってこない可能性だってある。
仕方ないっと何時も彼が出入りしていた扉のドアノブに手をかけた。

生きていることがわかればまた殺されるかもしれない。怒られてまた拷問されるかもしれない。
もしくは居なくて、、、、いなかったら?逃げる?

―考えたって仕方ないこのままいても餓死だし

ゆっくりとドアノブを回したがガチャっと小さな音がして少しドキッとする。チラッと部屋の外を見るとやはり私の部屋ではなく、どこかのホテルのような雰囲気だった。チラッとカウンターキッチンが目に入りそこがリビングダイニングであることがわかる。
恐る恐る部屋から出ると、カーテンの外にバルコニーが見える。だが、その先に見えた街は私が知っている景色と違った。

「海外?」

そう、テレビで見たアメリカの風景に似た景色だったが、遠目に見える看板は私の知っているスペルと違う。
まさか、私はあの気絶されていた間に飛行機で輸送されてこんなところまで連れてこられたのか。と考えたが何か違和感を感じる。
彼が言っていた何処から来たという言葉を思い出す。

―異世界トリップ?まさかね

非現実なことを考え。考えて、さっきの自分の身体が綺麗に治ったことを思い出し、ありえるか。
さっきのがありえるならありえるわっと納得した。

そして部屋をぐるっと見渡して、そこに彼がいないことを理解すると一気に肩の力が抜けた。
とりあえず、お腹がすいた。彼はいないし、冷蔵庫の中にいっぱい食べ物が入っていれば少しくらい食べても気づかれないだろうと私はキッチンに見える冷蔵庫を漁ることに決めたが、自分の足元を見ると足跡のように血が付着していた。

「やばっ」

冷蔵庫を漁った漁ってない以前にこれでは部屋を汚したと怒られる。と馬鹿なことを考えた。
怒られるも何も私は食べ物を食べたら服を拝借して此処から出ればいいのだ。そしたらもうあんな痛い目には合わないし、こんなにビクビク過ごすこともないのだから。
っと床を気にせずに冷蔵庫に行こうかと思ったが、何を考えたか、拭くものがないか部屋を探索した。

私は、リビングから繋がる一つの扉の向こうにバスルームを見つけて綺麗なバスタオルをとり床をふきに行こうか少し悩んだ末にシャワーで自分の身体を綺麗にしてから拭きに行くことにした。

何日ぶりの水浴びだろうか。痛みを与えられた際に噴き出た汗で髪はベタベタで、先程まで臓器が出ていた身体は自身の血が乾きこびりついている。洗い流した身体にすっきりとした解放感と爽快感がする。
しかし、心の中は穏やかではない。これからどうしようか、ここから出て彼から逃げて、いや死んでいると思われているのだから彼にとっては死体が無くなるだけの話だから追われることはない。逃げるという表現は間違えている。
だけど、ここから出たとしても頼る先はない。私の住んでいた場所ではないのだから。

―キュッ

シャワーを止めて身体をふきながら憂鬱さを表すような力の抜けた体を動かして、歩いて汚れてしまった床を拭いた。
拭いた後汚れてしまったバスタオルをどうするか悩みおそらくゴミ箱であろう箱の中に捨てた。

そして、ようやく当初の目的である冷蔵庫を開ける。

「あんまり入ってないや」

冷蔵室の中にも冷凍室の中にもたいして食べ物は入っておらず。肉は少しあったが今の自分の胃には重いと近くの引き出しや扉も開けてみると拳ほどの大きさのパンがあった。それをとり、近くにあったコップに水道水をくんで飲み込んだ。

するとギュルギュルとお腹が鳴りひくつくのがわかる。
喉が渇いていたので一気に飲もうかと思ったが身体が受け付けていないことを理解し、コップから口を離して吐き出さないように耐えた。

―何かで読んだけど確か餓死寸前で食べたら死ぬって

食べてもダメ食べなくてもダメってどうすればいいんだ。と内心毒づき胃が落ち着くのを待ってから近くにあった塩を少し水に混ぜてそれをまた一口飲んだ。塩水なんて不味くもなければ美味しくないはずだが、今の私にはとてつもなく美味しく感じる。
少しの間飲んでは吐き気を耐えそれを繰り返し。手につかんだパンをコップの水につけフヤフヤになるまで待った。

―まずそ

見た目は最悪だ。これでも食は今までいいものを食べてきた方で、味覚には多少なりとも自信があるが、ただ水にふやかしたパンに食欲なんてそそらない。だが、今はそんな事も言えず、掴むのも難しいくらいフヤフヤなパンを少し摘まんで口にいれた。

―甘い

そう甘かった。何も食べていなかった私の舌にはとてもとても甘く感じたのだ。


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