:: ▼跳ね馬
▼跳ね馬甘?
ヒロインが学生
よっし、鞄持った荷物持った自転車の鍵持った、あとは仕上げに髪をとかしてから家を出る!
私が洗面所を寄ってから玄関に行き靴を履いていると、後からついて来たディーノは壁に手を置きつつ寄り掛かりながら本日三度目の台詞を言った。
『ホントに今日は乗ってかねェのか?』
「うん、ディーノに乗ってばっかだと悪いし何より太るし、」
『そんなコト気にすることねーのに。』
残念だね、と髪を掻き上げる彼は、実はフェラーリに変形する金属生命体だ。そして幼馴染みで年齢が1つ上であるサムとの数奇の運命を遂げた私の、パートナー。
「乗りたいのは山々なんだけどねー、運動もしないと。」
『自転車で運動なんて出来るかよ?』
「出来るからー!」
ここ最近ずっとディーノに乗って大学に行っているものだから、今日は自転車で行くと伝えたのだ。だが未だに彼はそのことが不服らしい。
笑いながらも、遠慮なんてしねェで乗ってけよ、と促してくる。
けど私は、そのお誘いを迷わずに断った。一度決めたことは曲げないのが私である。
「いいよ、自転車で行くって決めたの、」
『頑固なsignorinaだなぁまったく、』
まぁそんなお前も好きだけどな。
ニィと不敵に笑うディーノに、かぁあっと瞬間的に赤面して、いてもいられなくなった私は慌てていってきますと玄関を押し開き、私の耳に、くつくつと彼が笑う声が届くのだった。
――――
「雨降って来た…!」
『だからオレに乗れっつたろーがよ、』
「う…ごめんディーノ…迎え来れない…?」
『もう行ってる。』
「えっ、」
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2012.10.05 (Fri)
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