▼ 第1話
「今日も部長のセクハラ炸裂してたね〜」
「ってか佐々木って人イケメンじゃなかった?連絡先欲しかったなー」
同僚たちは今日の合コンのことで盛り上がっている。
私のような陰キャがどうして合コンなぞに参加しているかというと、答えは簡単。数合わせである。
「ナマエは二次会来ないの?」
「えっ、ああ、うん……ペットの世話があるから、私はここで!また明日ね!」
ウェイ系のノリに疲れた私は、いもしないペットを言い訳にしてその場を離れることにした。
×××××
「はぁ…疲れたな」
みんなどうして、あんなにガツガツしているんだろう。
婚期が近いっていうのは分かるけれど、本当に好き合える相手じゃなきゃ長続きもしないだろうに。
ぐったりとした帰り道で、私はマンションのゴミ捨て場で何か動くものを見つけた。
「なんだろう……猫かな?」
構ってあげたいけど、我慢我慢。こういう人間のエゴで野良猫が増えちゃうんだもんね。
ペット不可の物件に住んでいる私にはどうすることもできず、罪悪感をひしひしと感じながらも、聞こえないふりをして素通りする。
「……え?」
その時。
ありえないものが視界を横切った気がした。
目をこすって二度見する。
「人間の……男、の子?」
ゴミ捨て場からヨロヨロと出てきたのは、紺のパーカーのフードを深くかぶっている、くすんだ灰色の髪をした小学生くらいの少年だった。
少年は、数歩進んで、ばたりとその場にへたり込む。
「君、ねえ君!」
慌てて駆け寄って脈を取るが、異常はない。軽く肩を揺さぶると、少年は薄く目を開いた。
「……ご、はん」
出会い
それが君との始まりだった
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