第二十七話
*微裏注意です。
―――――小夜視点
―お前とは今後一切関わらない。…離縁も考えておく。それで良いだろう?お前にとっても――
………マダラにそう言われた時、涙が自然と頬を伝った。
……やっと、離れられるというのに…私はマダラが嫌いなのに…大嫌いなのに…
…何故こんなにも胸が苦しいの?
私はマダラの後ろ姿を見届けた後、一人でふらっと自室に戻った。
すると、廊下にいた加代が私の元に駆け寄り、心配そうな顔をして話し掛けてきた。私は放心状態だったので、加代が何を言っているのか分からなかった。
「……一人にさせて」
私は襖に手を掛け、部屋にこもった。自分の気持ちが分からず、何をしたいのかが分からない。勝手に涙が溢れて、胸が張り裂けそうだ…。今までに無い感情に戸惑いつつ、腹が立った。
今までの私は自分の気持ちに正直に生きてきた。なのに、どうして…今となって自分の気持ちが分からないのか。
私はイズナさんを想い、マダラが大嫌いだった。あの人はイズナさんと違って優しくないし、凄く強引だ。私の気持ちを考えないで、自分の気持ちを押し付けて何度弄ばれたことか…。
そんな人のために悩まされているのかと思うと、無性に腹が立った。
……そうよ、全部あの人が悪いんだわ。
……何故あんな人のために悩まなくてはいけないの?
すると、隣の棚に飾っているわすれなぐさが自然と目に入った。私はその花を手に取り、外の庭に向けて投げてしまった。この花を見ると、どうしても何か違う感情が芽生えてしまうようで不快に思ったからだ。
私は花を投げた後、何故かまた涙が溢れてしまって部屋の奥に座り込んだ。ふと見てみると、着物の袖で涙を拭いていたから、染みができていた。それにも関わらず、私は涙を流し続けていた。
……何故…涙が止まらないの…?
すると、襖越しに誰かがやって来たのが分かった。
「小夜…入ってもいいか?」
「……何よ…今更…」
「……入るぞ」
私は泣いていた事を知られたくなくて部屋の隅へと移動し、顔を着物の袖で隠して、ばれないようにした。
「小夜……先程はすまなかった。」
「……。」
「……小夜…もしや…泣いているのか…?」
「……泣いてないわよ!」
私はより隅の方へ移動しようとすると、マダラに腕を掴まれて後ろから抱き締められてしまった。泣いている事を知られないように着物の袖で顔をより隠そうとするが、マダラに手首を掴まれて阻止されてしまった。
「やはり泣いていたのか」
「泣いてないわ!離して!」
「袖がかなり濡れている……それほど悲しかったのか…愛い奴だ」
顎を掴まれ顔をマダラの方へと向けさせられてしまい、私は恥ずかしくなった。今の私の顔は赤く腫れて涙の後がくっきりと残っていると思うと、より恥ずかしさがこみ上げたのだった。
「小夜、オレはお前を愛している。お前と初めて会った時からずっと…な」
「……何よ…散々私を弄んでいたくせに!」
「……弄んでいない。オレはお前への示し方が誤っていたのかもな…」
私はマダラの胸を押して離れようとするが、より強く抱き締められて余計に離れられなくなってしまった。顔を近付けられて、私の顔が次第に赤くなるのが分かった。
「離れて!……やっと別れられると思って嬉しくて泣いていたのよ!」
「……小夜…嘘をつくな、顔で分かる」
「なっ…!?わ、私は…」
私は顔を背けようとすると、マダラはまた私の顎を持ち上げて無理矢理顔を向けさせられた。体が硬直して思うように動けない…。
「小夜…お前はオレをどう思っている?」
マダラはかなり真剣な目をして、私を見つめていた。彼の目を見るたびに私の胸の鼓動が激しくなって、苦しかった。
本当に苦しくて、心臓がおかしくなるのかと思う程だった。
「私は…貴方が嫌いよ!大嫌い!!」
「小夜……」
「貴方のせいで、何度も苦しめられたわ!!今だって、本当に胸が…」
「なんだ?……言え」
マダラは少し小馬鹿にしたような顔をして私を見つめる。私は腹が立って、顎に触れている手を思いっきり叩き、マダラから離れる。
「早く出て行って!!」
私は襖を開けて、彼を追い出そうと促すがマダラは不敵な笑みを浮かべて私に近付く。
「……出ていけるわけないだろう」
「近付かないで!」
私はマダラから離れようと部屋の隅へ移動しようとするがマダラに着物を掴まれて、畳の上に転んでしまった。
「……何するのよ!」
「相変わらず、どんくさいな。」
マダラは私の着物を徐々に引っ張り、私を引き寄せようとするが、私はその着物を脱ぎ捨てて部屋の隅に移動する。
長襦袢だけになってしまった私を見て、マダラは怪しい笑みを浮かべる。
「フン…では、徐々に脱がすか」
「止めて!!近寄らないで!」
私はマダラから必死に離れようと部屋中を走り回った。すぐに追い付いてしまうので、私は息が上がり、疲れてしまった。いっその事、廊下に出て行きたかったが、さすがに下着姿のままだとみっともないので部屋に留まることしか出来なかった。
「茶番は終わりだ……」
「それ以上近寄らないで!」
私は力尽きて部屋の隅に追いやられてしまった。マダラは不敵な笑みを浮かべては、帯を掴んで勢いよくほどいた。
「……!?何をする気なの?!」
「近頃はやっていなかったからな」
「嫌よ…やめて…!」
マダラは私を抱き締めて腰の辺りに腕を回すと、徐々に私の着物を脱がしていく。
「止めて!……こんな事して許されると思っているの!?」
「小夜……お前の肌は誠に白くて美しい…」
「な、何を言っているの?!……あっ…」
マダラは私の鎖骨付近に口付けをして、甘くかじるように吸い付く。
私は身を捩り抵抗しようと試みるが、体が思うように動かない…。
「や…めて……ああっ…」
マダラは私への愛撫に夢中になっているようで、全く耳を貸さなかった。私の着物は淫らに垂れ下がり、上半身が露になっていた。そんな姿に嫌悪しつつも、何処か受け入れてしまう自分が心の中にいた。
……私はこの人が嫌いなのよ…なのに、何故…なの?
……私は心の中で葛藤しつつも、マダラの思うように半日以上抱かれ続けたのだった…。
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