行為が終わった頃には、すでに夕暮れ時になっていた。
マダラはいつも以上にしつこく、何度も繰り返すので半日があっという間に過ぎてしまった。こうしている間にもイズナさんの元に行って看病をしなければと思うが、体が思うように動かなかった。

行為後にはマダラが私の頬を触ったり、髪を弄ったりしていた。



「……フン…こんな部屋の隅でやるとは思わなかったがな」


「……。」


「だが、お前と久しぶりに結ばれたのだ……嗚呼…小夜……お前が好きだ…」



マダラは私の額に口付けを落とし、頬に触れながら再び覆い被さった。



「…お前からも言ってくれないか?」


「……何を言うのよ?」


「……オレを愛していると言え」



私はそう言われた瞬間、頬が茹で蛸のように赤くなり顔を背けた。何故私が好きでもないのに言わなくてはいけないのかと、少しむかついた。



「私は貴方が嫌いだから、そんなこと言わないわよ」

「……あれ程よがっていたくせに、何をぬかすか」


「貴方ね、自惚れるのもいい加減にしなさいよ!私は貴方が嫌いなの!!」



私はそう言うと、マダラは私の秘部に厭らしく触り出す。くちゅっと卑猥な音が響き、不快に思った。



「や…めて…そこは……ああッ…いやッ…」


「早く言え」


「嫌よっ……いい加減に…してっ…」



マダラは少し眉間に皺を寄せながら、秘芽を摘まむ。私は絶対に屈しまいと、口を一文字に結んでいた。



「……フン…まぁ、いい…興がそがれた」



マダラは私から離れては壁にもたれ掛かり、ふっと溜め息をつく。
私は上半身を起こし、乱れた髪を軽く整えていた。



「お前はオレを嫌いだと言うが、何故オレを受け入れる?」


「えっ……」


「お前は言っている事が無茶苦茶だ。」



マダラは私を見つめ、返事を待っている様子だった。私はマダラが何を言いたいのかが分からなかった。彼は私に何と言って欲しいのか…?



「何が言いたいのよ…それは無理矢理、貴方が私を…」


「…だがな、情事の最中のお前は今とは別人だ。素直にオレを受け入れる…意味が分かるか?」


「そ、そんなこと…ないわ…絶対。私は…」


「まだイズナを好いているのか?」



マダラは私の手をとり、真剣な目をして…そして、少し悲しそうな顔をして私に話し掛ける。

……そうよ、私はイズナさんが好きなのよ…何を迷っているのよ?……早くマダラに言わなくては…

私は口をもごもごさせて、中々言えなかった。
マダラは耐えられないのか、私を引き寄せて熱のこもった目で見つめる。


「……私はイズナさんが…す…好きよ…」


「……それは本当か?嘘だろう?正直に言え」


「……好きよ…あの頃からずっと…」



マダラは眉間に皺を寄せながら、ぐっと顔を近付ける。



「何故…イズナなんだ?」

「イズナさんは…私に優しいから…一緒にいて、心がときめくの…」



マダラは更に眉間に皺を寄せながら、より強く抱き締めてかなり力んでいたのが分かった。
私は何故だか分からないが、彼と目を合わせられず、ずっと下を向いていた。



「オレは…お前にとって何だ?……オレは可笑しくなりそうだ…こんなにも…お前を…愛しているというのに…」



マダラはふっと笑って、悲しそうな顔を浮かべる。だが、そんな素振りを見せまいと、必死に威勢を張っているのが分かった。



「……分からないわ…」


「…そうか……イズナではなく違う男だったら、今すぐにでもなぶり殺しているところだ…」


「…ま、マダラ…!?」



マダラは少し狂気を含んだような目で一点を見つめていた。そして、マダラは私に優しく触れるだけの口付けをする。



「……弟に嫉妬するとは情けない…な」


「……マダラ…」


「……すまなかったな、小夜…疲れただろう?これからは……お前の気持ちがはっきりするまで、今日のような事は一切せんから安心しろ。」


「……。」



マダラは周りに脱ぎ捨てられた着物を手に取り私の肩にかけたあと、忍装束に着替えて部屋を出て行った。
私は彼の後ろ姿を見届けた後、汚れてしまった着物を丸めて、新しい着物に着替えた。身だしなみを整えた後、私はイズナさんの部屋へと向かった。今日は全然イズナさんの元に行ってなかったから、凄く心配していた。
マダラがあんなにしつこくなかったら…今ごろはイズナさんに付きっきりになっていただろう。私はイズナさんの部屋に着き、声を掛けた。



「イズナさん、入ってもいい?」



暫くの間、返事を待っていたが、中々返事を貰えず不安になって襖を開けた。



「イズナさん…大丈夫!?」


すると、イズナさんはすっかり弱りきった姿で口を少し開く。そして、体を震わせながら上半身を起こそうとしていたから私は駆け寄ってイズナさんを支えた。



「姉さん…すみません…」

「御免なさいね…起こしてしまって…」



私はイズナさんを支えながら、静かに話した。顔を見てみると、かなり青白く衰弱しているのが分かった。そんな姿を目にして、勝手に涙が頬を伝った。



「……姉さん?」


「ううん、なんでもないわ…」



イズナさんは軽く咳をしたあと、手探りで何かを探していた。



「どうしたの?」


「この辺りに…押し花があると思うんですが…」



イズナさんの手先を見てみると、そこには小さな押し花が置いてあった。私はそれを手に取り、イズナさんに渡した。



「……これね?」


「……はい!そうです…!ありがとうございます…!」



私は何となく予想がついた。この押し花は…きっと加代からの物に違いないと…。イズナさんはその押し花を手に取ると、嬉しそうな顔を浮かべていた。



「イズナさん…加代のことが…好きなのね?」


「……!……何故…その事を…」



イズナさんは少し慌てたような素振りを見せていたが、平静を保っていた。



「……知ってたの…ずっと前から…加代に嫉妬したりして…本当に…情けないわ…」


「……姉さん…」


「でも、イズナさん…私は貴方が好きなの…!」



私はイズナさんの胸に抱き付き、顔を埋めた。…しかし…以前に抱き付いた時とは違って全く胸がときめく事はなかった…。
……何故…?私はとうとう可笑しくなったのかしら…?
私は慌てるように、イズナさんにすがりついた。


「……姉さん…?!」


「御免なさい…!でも、今はこのままでいさせて…!」



全く胸の高鳴りが感じられず、私は顔を見上げてイズナさんの顔をみつめた。……そして、私は思わず…イズナさんに軽く触れるだけの口付けをした。口付けをすれば気持ちが変わるかもしれないと思い、かなりはしたない事をしてしまったが…それでも…私は一切ときめく事はなかった…。



「御免なさい…はしたない事をしてしまって…」


「姉さん…何かあったんです…か…ゴホッゴホッ!」


イズナさんは疼くまって咳をし始めた。私はイズナさんの体調が悪くなったのかと思い、体をさするが、イズナさんはかなり苦しそうにしていた。


「イズナさん!しっかりして…!」


「………うぅっ…」



イズナさんの顔は更に青くなり、布団に倒れてしまった。かなり重症なようで、顔から大量の汗が出ていた。



「イズナさん…!嗚呼…御免なさい…私があんな事をしたから……!今すぐにお医者様を呼んでくるわね…!」


「姉さん……」



イズナさんは私の手首を掴み、私を引き留めた。


「もう…治らないんです…この体……潮時なのかも…しれません…うぅっ…」

「イズナさんっ!!!」



私はイズナさんの手をとり、全く体が動かなくなってしまった……。



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