第十六話

―――――小夜視点



昨晩、またあの人に散々弄ばれて、かなり腹が立ったが、この前ほど腰の痛み等は感じられず、今日の鷹狩りに胸を踊らせながら支度をしていた。

……イズナさんも来るし、本当に楽しみね…

私はいつも以上に髪を櫛でとき、何度も鏡の前で身だしなみを整えていた。

すると加代が襖越しにやって来た。



「おはようございます、小夜様。今、お部屋に入ってもよろしいでしょうか?」


「いいわよ。入りなさい。」


「はい。失礼します。」



加代は部屋に入り、布団の片付けをした。
加代が片付けを終えるのを見計らい、私は髪を結ってもらうよう、加代に頼んだ。



「加代、少し髪を結うのを手伝ってくれない?」


「はい!かしこまりました!………わぁ、小夜様の御髪……とても綺麗……。羨ましいです!」


「そうかしら?」


「はい!私なんて、そばかすもありますし、髪もごわごわで…本当に小夜様が羨ましくて……」



加代は私を褒めてくれるけど、あまり髪の手入れをしたことがない私にとっては実感がなかった。
加代は私の髪を綺麗に結ってくれた。
すると、加代の着物から何かが落ちた。



「……落ちたわよ?……これは…押し花ね?……綺麗な花ね。」



加代は顔を真っ赤にして少し戸惑いながら、受け取った。



「すみません……。ありがとうございます……」


「それに秘密でもあるのかしら?」



私は加代の行動に気になり、聞いてみた。
すると、加代は顔を俯かせて恥ずかしそうにしていた。



「……大切な方から……貰ったんです……。」


「そうなの?素敵ね!誰からいただいたの?」


「………すみません。申し上げることは……できません…。」


「そう……。」



私は加代が話したくなさそうだから、身を引いた。
私も好きな人から花を貰いたいと思った。
イズナさんに貰えたならどんなに嬉しいことか……と心の中で少し想像をしては胸が高鳴った。

すると、加代は話題を変えて話し出した。



「でも、良かったです。小夜様がマダラ様のお気持ちに気づいていただけて…小夜様がマダラ様を陰ながらにお慕いしているとマダラ様がお知りになれば…なんとお喜びになるか…!」


「……。」



…そうだった。私はこの前加代に話したときに誰を慕っているのか話さなかった。
相手がイズナさんだと言えば大変なことになると思い、黙っていた。



「では、私も支度をして参りますので、失礼します!」



そう言って、加代は部屋を去った。
私は仲良くなれた加代に好きな人の話をすることが出来なかった…
誰にも言えないなんて……


私は部屋の中でひっそりとイズナさんのことを想った……。



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