隣の住民にはご注意を


(ふぅ…今日も綺麗になった!)


私は朝から落ち葉を箒で集め、アパートの廊下を綺麗にしていた。
何故、面倒臭がりな私がこんな事をしているのかというと…

ある一つの理由があった。

それは…



「……あっ、おはようございますっ…!扉間さん!」

「……今日も朝からやっているのか。」



これが理由だ。
早朝からバンドの練習に行く扉間さんが、この廊下を通る時間を見計らって、私は毎日掃除をしている。こうして、自然な成り行きで扉間さんと距離を縮められたら…と思い、私は日々頑張っているのだ。



「……だが、お前のお陰でこのアパートも綺麗になった。」


「そ、そうですか!?そう言われると…嬉しいですっ…」



私は顔が赤くなり、顔を俯かせていた。
扉間さんみたいなカッコいい人に褒められると、本当に胸がドキドキする。



「……と、扉間さんは…今日もバンドの練習ですか?」


「ああ、そうだ。」


「わ、私…応援してますから……!扉間さんの…だ、だ、だ……」



大ファンだからっ!(はーと) と、言いたい所だけど、恥ずかしくて…中々言えずにいた。

(ああ! なんで言えないのよ!)


「……?」


「だ……大ファ『おい!吉崎!飯はまだか!』」

すると…私の部屋から…あのマダラが出てきて、いきなり大声を出したのだ。


「なんだ…扉間と話していたのか。そんな奴と話すなら、早く飯を作れ。オレは腹が減っているんだ」

「吉崎…お前は…マダラと同棲しているのか」

「ち、ちがいます!これは誤『ああ、そうだ。』」

「お前も変わった奴だな。」

「えっ…?!ちょっと…待って…扉間さん!!」



私が弁明をしようとするが、既に時遅し。扉間さんは階段を降りて、何処かに行ってしまった……。


「マダラさん…いい加減にして下さいよ!!扉間さんに勘違いされたじゃないですか!!」


「何を怒っている?事実じゃないか。」

「はぁっ!?いつも、貴方が食事目当てか暖房目当てで…無断で入ってくるだけでしょ!?」

「ふん、いちいち五月蝿い女だ。早く飯を作れ」



マダラさんは煙草を吸いながら、私を呆れたような顔で見ていた。



「もう…我慢出来ない…柱間さんに全てを話そう。壁が壊れた経緯も全て……」

「やめろ!それだけは…勘弁してくれ」

「………。」

「すまなかった…二度とお前の部屋には行かない…。」

「本当ですか?」

「ああ。」

「…………。(ほう。これで言うこと聞くんだ…。ちょろいな)」



――――…



朝御飯を作っていると…


(なんだか…視線を感じる……)


出来上がったフレンチトーストを机の上に運んでいると、隣の壁から布を少し開けて、目をギョロギョロさせながらマダラさんが此方を(特にフレンチトースト)見ていた。

無視して食べていると、時々後ろからジュルリと音が聞こえて気持ちが悪かった。


「……朝御飯、作れないんですか?」



私は背を向けながら言った。



「……いや、金がない。」

「なんで、お金がないんですか?」


「競馬に使ってしまった」

「…………。」



私は大きく溜め息をつくと、小さく切り分けたフレンチトーストを小さなお皿の上に置いて、マダラさんの元に持って行った。



「……はい、どうぞ」

「……くれるのか?」

「……もう、これっきりですから」

「フン、可愛らしい所もあるんだな。」

「……なんですか、そ、その…口説き文句は…」

「……なんだ?これ位のセリフで反応するのか?」

「……はぁ!?し、してませんから!!」



マダラさんはニヤリと笑うと、不覚にも私は胸をドキッとしてしまった。


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