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 「好きです。」

 夏休み真っ盛り。蒸し暑い真夏のある日、スーパーのバイトが終わり更衣室で制服とセットの帽子のおかげでペタンコになってしまった明るい金髪をワックスで整え直していた大河内智也は後ろから声をかけられた。 
 バイト先の後輩で、偏差値も低く不良が多いと言われる高校に通う智也とは違い、県内一の学力と伝統を持つ高校に通う真面目そうな江崎理玖という男から告白された。
 智也はゲイだか、オープンにはしておらず、むしろ知られてはまずいと仲間内には彼女がいると言ってある。もちろんバイト先でも。

「え…江崎ってホモなの?悪いけど…」
「俺、知ってますよ。智也先輩、年上の…男の恋人、いますよね」

 智也は内心動揺したが、顔には出さないように努めた。
 目の前の男が自分が誰と付き合ってるいか知っている。軽く溜め息を吐いて面倒くさそうに言う。

「知ってんならさ、なんで告るの?」
「あの人は浮気してますよ。智也先輩、知らないんですか?」

 後輩の言葉に智也はイラっとした。後輩の彼に言われなくても知っているし、進路以上に悩んでいることだった。
 高校3年生の智也にはひとつ年上、大学生の『彼氏』がいる。彼は内田と言い、同じ高校で先輩、後輩だった智也と彼氏は、彼が大学に行っても付き合いを続けていて、極たまにひとりで暮らしている彼の家に泊まっていた。
 しかし、春が過ぎた頃から内田の家には女物の下着が落ちてたり、歯ブラシが増えていたり、料理をしない彼の冷蔵庫に手料理がラップを被って入っていたりした。
 明らかに女がいる。
 しかし彼は何も言わず智也を抱いた。 
 『愛してる』と言った。

「知ってるよ。しょうがない。俺は女じゃねえし、…少しくらい」

 女が良くなることもある、と言いそうになって詰まった。智也はおかしいこと言ってるな、と自嘲して自分より少しばかり背の高い後輩を押しのけて逃げるようにバイト先を後にした。





「…………」

 すごく悩んだ末、約束はしていなかったが内田の家にやってきた智也は玄関で放心していた。
 まだ中には入ってないものの、明らかに女の子の靴がある。
 怒るべき?知らない振り?待つ?我慢?殴り飛ばす?
 智也の頭は選択肢で溢れかえっていた。






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