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 古谷が奥をぐりっと抉ると、想は胸を反らせて達した。
 ふわっと力が抜けるのに、腰が痙攣するように震えた。

「っ、あぁッあ、んっ……ん!」
「っ、エロ……っ!有沢、ヤバい」

 想は頬を染め、口端に垂れる唾液を舐めとりながら震える腰を僅かに揺らしている。
 その痴態が普段の想とかけ離れており、古谷の興奮は最高潮だ。閉じられている瞼に、優しくキスして開けさせる。

「なあ、好きだよ。強がりなところ……」

 ゆっくりと開く瞼とは真逆の勢いでガンガンと古谷の家のドアが叩かれる。というよりは蹴られているようだ。

「……んだよ」

 それでも古谷は気にせず、想の首筋を甘く噛み唇で愛撫を繰り返しながら、ぱちゅぱちゅ、と軽い水音を繰り返すように想のアナルにペニスを突き込んだ。
 座位から正常位に変えたくなり、力の抜けた想の身体を押し倒そうとした時、ドアの向こうから声が響いた。

「士郎!!起きなさい!」

 春海の声に古谷は驚いて固まった。
 想はぼうっと、とろけた表情のまま俯いて甘い吐息を繰り返している。

「ったく、寝てんの?!開けるわよー!」

 ガチャンと外された鍵と同時ほどにドアが乱暴に開かれた。
 古谷は盛大な溜め息をわざとらしく吐く。
 春海はカバンを落とすほど驚き、固まっている。
 想は古谷の肩に額を預け、快楽の余韻にただ朦朧としていた。

「ちょ、……あんた……!」

 陽は出てきたが、カーテンの閉まっている薄暗い廊下でもどんな状況かはっきりと分かる。
 春海が古谷を攻めるように声を荒げると、想がハッとして春海をみた。
 春海は一目で有沢想だと察したが、想は疲労と気だるいさと状況に混乱しており、相手は古谷の恋人か何かだと思った。

「……う、あ……!」

 想が慌てて立ち上がろうとしたが、腰は完全に抜け、足も震えて立ち上がれない。
 真っ青になっている想の身体を一度抱き締め、古谷は想から離れた。
 ぬぽ、という厭らしい音と共にペニスが想から出て行く。下半身はぐちゃぐちゃだ。

「士郎!あんた……分かってんの!!殺されるわよ!手を出していい人間くらい分かるでしょ!」
「あー、はい、スンマセン」

 春海は小声で古谷を責め立てる。

「岡崎組組長の箱入りで、あの新堂漣のモノよ?希綿さんだって一目置いてるし、今は関西ヤクザの標的よ!」

 古谷は大して悪びれもなく反省の言葉言い、タオルを取りに立った。春海は古谷の背中を睨み付けていたが、座り込んでいる想に移した。
 有沢想が何者が、名前や噂は知っていたが初めて目の前に見ている。もっと、細くて可憐な女顔かと思っていた春海だが、それなりに背もあり、整った顔立ちで可愛さも見える。実際聞いていた年齢より若い感じの男だった。
 黒い噂もあながち間違いではないと思わせる。
 古谷がどうにも止まらなくなるような相手かと言われると、悩むところだ。
 そんな春海の見解をよそに、普通に想は服を整え、片足に絡まっていたスウェットと下着を上げようと壁に手を突いて膝立ちした。
 春海の視線が痛いほど突き刺さっているのを感じて、顔が上げられない。

「そのまま服着たら汚れるわ。馬鹿が拭くもの持ってくるから少し待ってなさい」
「すみません。……今、すぐ帰ります」

 想は意を決して顔を上げて春海を見ると軽く頭を下げた。
 ハッキリと謝り、言い訳もしない様子に、春海は黒髪をかき上げ、想のそばにしゃがんだ。それから眉を寄せて声を小さく落とした。

「士郎に無理矢理されたんでしょ、ごめんなさいね」
「えっ、ち、ちがいます!」

 責められると思っていた想はぽかんと春海を見た。それから、慌てて首を振り、無理矢理されたわけではないと伝えて下着を上げようとした。
 春海は『ダメよ』とその手を止め、古谷が持ってきたタオルを想に渡した。
 想はもう一度頭を下げて、タオルを受け取る。

「士郎、話があるから奥に来て」
「……説教は嫌ですけど」
「シマコが警察に捕まったわ」

 春海の言葉に、古谷は経緯を絡めながらシマコが袖川組に加担していることを話した。驚きと、焦りを示す春海を慰めながら、古谷が廊下に声をかける。

「有沢、シマコさんのこと、説明してやってくれな……いか……」

 古谷が廊下を覗くと、想の姿は無い。慌てて玄関に向かうと、靴もなかった。
 廊下まで綺麗にされ、何も残さずタオルまで持って出て行ったようだ。
 春海が廊下を覗きに来て、立ち尽くしている古谷を見つけて小さく溜め息をもらした。

「士郎?」
「有沢が……消えた」

 申し訳無さそうに目を伏せる古谷の頭を春海が思い切り叩いた。
 痛みに頭を押さえている古谷に、火がついたような春海の説教が延々とぶつけられた。











 重たい腰に渇を入れ、タクシーで帰宅した想は取りあえずふらふらとシャワーを浴びた。着ていたものも汚れたタオルも燃えるゴミに捨てる。
 ジーンズと長袖シャツ、カーディガンを羽織ってもち太に謝り、散歩に出掛けるためにジャケットを着る。
 首輪もリードもそのままに出て行ってしまった自分に、もち太にひどいことをしたと想は深く反省していた。
 玄関に向かう途中、バスルームに広がる散らかり具合に、想は肩を落とした。
 シャワーを浴びている最中、あまりの自分の醜態に鏡を殴り割ってしまった。案外簡単にヒビが入り、後は崩れるように剥げていく。何度も殴りつけ、鏡は殆ど砕け落ちた。
 後で片付けないと……と溜め息を吐いて部屋を出る。

「……俺、すごく……最低だ……」

 未だに違和感の残る腰以下に深い溜め息が零れた。
 もち太と外に出ると、想は昼前の温かく明るい日差しに俯く。
 冷めた視線で自身のブーツのつま先を睨み付けた。






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