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「……まじだ」


 2年C組の教室に、あの人が現れた。クラスの奴らが口々に『三年の高屋さんだ』と言っている。


「颯真」

「はい!」


 呼ばれて即座に返事をした。クラス奴らの視線が一気に俺に集まる。
 もちろん俺はランク付けなんかにかすりもしない名もなき一般生徒だ。ただ頭が悪いからここしか受からなかっただけで、別に不良でもない。


「高屋さーん。伊坂なんかしたんっすかー?」


 マッチが俺の身を案じてか、俺より先にあの人の所へ行ってくれた。というか、このクラスにはあの人に話しかけたくても、そんな勇気がある奴はマッチくらいしかいないだろう。


「一緒に昼メシ食うだけだっつの。言っとくけど金払わせたりパシらせたりもしねーぞ。お前変な心配してんなよなー」

「別に高屋さん疑ってるわけじゃねっすよ。でもなんか伊坂がビビってる感じしたから確かめただけっす」

「え、あいつ俺にビビってんの?」

「あれは完全ビビってるでしょー。ま、高屋さんはジーコさんの友達っすから、俺は信用してるっすけどね」

「お前らんとこって仲良いよなー」

「高屋さんもうち入ります? 高屋さんレベルなら絶対入れますよ。よかったら俺、リンさんに言っとくっすよ?」

「バーカ、ぜってぇ嫌。チームとかそういうの興味ねぇもん」

「えー。もったいない。楽しいのに」

「はいはい。それ浩志にも言われたわ。つか、颯真。早く来いよ。メシ行こうぜ」


 そのまま俺の存在を忘れてくんないかなーって思ってたけど、そう甘くなかった。


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