俺は変わんない




SIDE:リン


 3月14日。今日は学園で仲良い奴は全員イベントに出席しなきゃで俺だけ暇だから、タケさん家……つまりは呑んだらええやんの2階にお邪魔していた。住み込みで働いている秀の部屋もここにある。
 良介が産まれてから2ヶ月。久しぶりに会ったらすげー大きくなっていて驚いた。


「繭ちゃん、ちゃんと寝れてる? 疲れてんじゃない? 午後は俺が良介のこと見てるし、タケさんと一緒に寝ててもいいよ」


 時刻は午前11時。タケさんは店の開店に合わせて仕込みをするまでの間、仮眠を取ってるらしいから、繭ちゃんも一緒にと勧める。ちなみに今日の昼メシは俺が腕を振るうことになっている。ここに来る前にしっかり食材も買ってきてある。


「大丈夫よー。秀ちゃんがね、すっごく手伝ってくれてるから、楽させてもらってるの。今日もリンちゃんがご飯作ってくれるし楽しみだよー」


 ほわほわー、と周りに花でも飛んでいそうな繭ちゃん。しんどくても大丈夫って言ってしまいそうで心配だ。
 繭ちゃんとほわほわ喋ってるとタケさんが入ってきた。


「ミルク作ってきたでー。ほい、飲ませてみ」

「俺が? いいの?」

「おう、やってみ!」


 恐々と良介を抱いて、タケさんから哺乳瓶を受け取る。念のため、生後2ヶ月の赤ちゃんの情報や扱いは頭に入れてきた。
 俺の目をチラと見てから、哺乳瓶を咥えてぐびぐびとミルクを飲む良介。なんだこりゃ。可愛い。


「めちゃくちゃ飲んでる」

「そう、いっぱい飲むの! えらいねー」


 ほわーん。良介もこんな風にほわんとした子になるのか、それともタケさんみたいに活発になるのか……どっちだろ。


「そういやお前、最近どないしとってん。またおらんなったんちゃうかってあいつら心配しとったぞ」

「あー……ちょっと、ゴタついてさ」

「大丈夫か? カタはついたんか?」

「うん。もう落ち着いた、かな」


 哺乳瓶が空になって、予習してきた通りにゲップをさせようと試みる。しばらくすると小さく『ケフ』とゲップをしてそれもまた可愛かった。


「俺さ、赤ん坊の頃に孤児院の外に置かれてたんだって。家族とかそういうの知らずにずっと生きてきたんだけど、最近になって血縁者がいたって分かってさ。それで、まぁゴタゴタしてたっていうか」

「……ほんで、これからどないすんねや」

「うん。俺は変わんない。結局母親は死んでたし、父親も。ただ兄貴が2人いるって分かったから、うまくやっていきたいなって思ってる」

「そうか。ほんなら、また連れて来いや。まけたるしな!」


 ほろほろ泣いてくれてる繭ちゃんと、肩をバンバン叩いて励まそうとしてくれるタケさん。
 ずっとここにいちゃいけないんだって常に思いながら生きてきた。だけど、もういいんだよな。ここにいたいって、ここが俺の居場所なんだって思っても……いいよな?


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