MERINGUE CAFE | ナノ


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頷く依月を見ながら優生はコーヒーを飲む。

「ね、優生」
「ん?」
「ここに達志がいる?」
「……よく、わかったな」
「だって、達志のブレンドコーヒー、一度だけ飲んだことあるもの」
「そうだっけ?」
いつ依月と達志が出会っていたか優生は思い出せない。だが会ってはいるのだろう。依月は達志のコーヒーの味を知っていたのだから。

「さっきコーヒー持ってきたのが達志だ」
「ああ、そういえば覚えのある声だ」
「いつ会った?」
「優生が大学生の時だよ。それ以外ある?」
優生と達志が知り合ったのは大学入ってからだ。2年の途中で達志が大学をやめるまでの間しか達志と依月の出会いはない。

「そうか。そうだな」
「優生、覚えてない?」
「全然」
依月は息を吐く。

「……そろそろ行こうか、優生」
「ああ」



店を出て優生は類に電話をかけた。今から依月を連れて帰ると。

電車に乗り優生の最寄り駅に着くと、類が迎えに来ていた。

「優生」
類が優生を見付けて寄って来る。
依月を見て足元の盲導犬に視線が行く。そして類は優生を見、また依月に戻る。

「こんばんは、依月さんですよね。類です」
その声に依月は笑顔で挨拶を返す。

「依月あやめです」
「あやめさん。どんな字を書くんですか?」
「菖蒲(ショウブ)っていう植物があるでしょう? それってあやめとも読むんです」
「菖蒲の花かぁ。素敵な名前ですね」
「ありがとう」
にこりと依月は微笑んだ。


優生の家で依月をもてなした。
「すっげー、うまそう」
テーブルに用意したものを見て優生は感嘆の声を上げる。

「依月。ハーネス外してあげろよ」
優生が依月に声をかける。

「いいの?」
「いいに決まってるだろ」
器用に依月はハーネスを盲導犬の身体から取った。

「来い、バース」
優生の一声に盲導犬バースは優生に駆け寄ってじゃれる。
よしよしと優生の手がバースを撫でる。バースの尻尾がブンブン振られていた。

類は呆気にとられてそれを見ていた。盲導犬というものは大人しいものだと思い込んでいた。

「盲導犬もハーネス外せば普通の犬なんだよ」
類の呆気にとられている様子を察したのか依月はそんな事を言った。

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