MERINGUE CAFE | ナノ


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「いらっしゃいませ」

カフェにはそこそこのお客が入っていた。

達志がこの店にアルバイトとして手伝う以外は三雲が1人でカフェを切り盛りしていた。


「優生」
にっこり達志は微笑んだ。
隣にいる三雲はよう、と手を上げた。

「達志、いつもの」
頷く達志に優生はカウンターの席に着いた。

「今帰り?」
「ああ」
「じゃあ、もうすぐ上がりだし一緒に帰ろうよ、優生」
「あー。俺ここで人と待ち合わせしてるんだ」
「そっか」

三雲がちらりと優生を見た。

優生は達志に気付かれないよう、小さく首を振った。
類ではないと意志表示。三雲に伝わったのか頷いた。


からんからんと音を響かせて店の扉が開く。
その音に優生は振り返った先に依月が立っていた。

「達志、コーヒー、テーブル席に持って来て。あと1つ追加な。依月!」
最後の名を依月に向ける。優生は依月に近づいて一緒にテーブル席へ座った。


依月の傍らには盲導犬。
「犬、だ」
「盲導犬だ」
「店に犬いいの? 盲導犬って犬だよ、ミク」
「盲導犬じゃ仕方ない。他のお客様も特に何も言わないし今の所は……」
「……だね」


カウンターでこんな会話をされていた事も知らず、優生は久しぶりと言った。

「久しぶりだね。でも懐かしさはないね」
クスクス依月が笑う。
「そりゃあ、電話で頻繁に連絡してたからなぁ」

お待たせしました、と達志は2つコーヒーをテーブルに置いた。

「ありがとう」
依月が達志に礼を言う。
ごゆっくりと声をかけ、達志は下がった。


「誰なんだろう?」
カウンターに戻って来た達志が呟く。

大学時代、優生に男友達は皆無だった。

「ミク、知ってる?」
「依月って呼んでたな。聞いた事ある。中学からの友達だって優生から聞いた事ある」
「ふうん。優生にいたんだね、友達」
知らなかった、ぽつりと達志は言った。


「楽しみだな、類さんの手料理」
この後の予定は家で依月と類の打ち合わせ。ついでにご飯もとなっている。

「打ち合わせが先だろ」
「そうだけど。優生いつも類さんの手料理は美味しいって言うからすごく楽しみなんだよ。……びっくりするよね、きっと」
依月は目が見えない。そんな人物が童話を書きイラストを依頼する。

類のイラストを見ることも出来ないのに。

「大丈夫だろ。そんなの些細な事だ。依月は依月だろ」

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