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それから頻繁に電話やメールが来るようになった。
学生の頃も達志はよく電話やメールをして来た。
学生の頃と変わらない。
達志がなぜまた優生と連絡し合おうと思ったかはわからない。
達志を傷つけたのは自分だと分かっているから。
「お帰り、優生」
家に帰れば同居人が夕飯を作っていた。
いや、同居人じゃないな、隣人だ。
隣に家があるにも関わらず、なぜかうちに来るのだ。
いや、なぜかは理由はわかってる。
「いたの」
「いるよー? いつもいるでしょー?」
にへっと、類は笑った。
「今日のメニューは何?」
「んー、トンカツだよ。ワカメスープ付き。あとね、ポテトサラダ。もう出来るよ」
「ん。着替えて来る」
類は、イラストレーターだ。仕事は自分の家でしているようだけれど、優生は類が仕事しているところを見た事がない。
「類」
着替えて来ると食卓には夕飯が並べられていた。
「何ぃ?」
類が振り向く前に後ろから抱きついて、小さな包みを類に差し出した。
「え?」
「誕生日プレゼント」
「え。誕生日?」
「今日だろ」
「忘れてた……」
類は包みを受け取ると、小さくありがとうと言った。
「優生、大好き」
くるりと振り返って抱き付いてくる。
そう、これが理由だ。
パーマっ気のない綺麗な髪にキスして類の顎を上げさせた。
類の嬉しそうな、そして恥ずかしそうな瞳とぶつかる。
達志とよく似た瞳。
類は達志によく似ていた。
「メシにしようか。冷める」
「……うん」
「それとも、類を食ったほうがいい?」
類は真っ赤になって、先にご飯!と叫んだ。
類はそう言ったにも関わらず、優生を離そうとしなかった。
「どした?」
「優生も言って? 僕が好きって」
上目遣いで見上げてくる。
「類が一番だ。愛してる」
「達志より?」
「達志より」
「ほんと?」
「疑うのか」
ぶんぶんと首を振る類に笑った。
達志にウソをついた。
いるよ、好きな奴。
類だ。
達志が優生を狂わせた。
達志と出会わなければ優生は男と付き合うなんてなかっただろうなと思った。
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