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「かわいこぶるな」
「ちぇっ」
舌打ちする。
「聞けよ」
ソイツの声色が変わって態度も男になる。
変わりようにア然とする。
「オレのどこがフラれるよ」
「そのギャップに気付け」
「だってこれもオレじゃん。慰めろ。で、誰」
ソイツはようやくおれに気付いた。
「ま、いいや。オレと関係ないヤツだし。なぁアラタ、今日泊めろ」
「イヤ」
「犯すぞ、テメッ」
「慰めてほしいんだろ、だったら静かにしてろ」
「……」
本当に慰めて欲しかったのかホントに静かになった。
「なんでフラれるかなー」
「イケメンが乙女チックだからだろ」
「何がいけないよー。それひっくるめて好きだって言ってくれる男いないのか? なぁ、お前はさイケメンが乙女チックってヒク?」
「えっと、」
いきなり話しを振られて慌てた。
「かわいー、こいつ」
「やらねーよ?」
「や。いらないから」
「なんかムカツク、お前」
センパイがぽつりと言うと、あははっと笑ってソイツは事もあろうか! おれにキスしやがった!
「お前、ヒナタだろ?」
頷くとにやっとセンパイに笑いかけた。
「なんで知ってるんですか?」
「そりゃあ、オレにアラタがお前の事しゃべるからさ。
ハギヤってゆーの。高2。ハギヤって呼んで?」
「ハギヤセンパイ」
「センパイいらない。こいつスバルみてー」
「スバルの弟だよ、ヒナタは」
「あ、そうなんだー。にてるにてる。あいつ元気かなー」
「元気だよ。この前同じガッコだって知ったよ」
「気付けよ、スバルかわいそー。なぁヒナタ」
後で聞くとハギヤはセンパイの従兄弟で近くの市立の高校に行ってるんだそうだ。
学年トップだというから人は見掛けによらない。
「もてるでしょう、ハギヤ」
「もててもなー、女じゃね」
にゃぱっと笑うハギヤはなんとなく憎めない。
「エコーズのさ、Zooっていう曲あるじゃん? 知らね? 愛を下さい愛を下さい、ゆーやつ。まさにあれだよ」
「オレ、ハギヤの事好きだなー。きっとハギヤを好きだって言ってくれる恋人ができるよ」
「ヒナタ、お前いいヤツだな」
そう言って髪を掻き回された。
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