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孝之の白濁した精液が互いの腹を汚す。
「天国、行けた?」
荒い息をする孝之にキスして、孝之を見る。
孝之は手を伸ばして尊を引き寄せる。
尊のぬくもり。
「尊」
「ん?」
「尊もイって?」
尊が笑う。
まだ孝之の中に尊はいた。
「孝之、エロい」
そう呟いて、孝之を突き上げイった。
「孝之、その顔、俺以外に見せるなよ。その顔だけでイける、俺」
涙で潤んだ瞳。上気した頬。半開きの唇。
「他に誰に見せるんだよ、ばーか」
頬を更に真っ赤にさせ、反論してきた。
「それもそうだな、孝之は俺に惚れてるもんな」
「……っ」
孝之は言葉を詰まらせる。
「孝之、風呂入ろ?」
きゅっと孝之を抱きしめる。
「尊は誰が好き?」
孝之はそっと尊から離れた。
「孝之?」
「正直ツライよ。尊といると。……欲張りになるんだ。尊の特別になりたい…って」
ふっと小さく孝之は笑う。
「あーあ、言っちゃった」
肩を落とし、孝之はベッドを降りた。
部屋をでていくその背中を尊は見ていた。
数十分して孝之が部屋に戻ってくる。
「怒って帰ったかと思った」
「……」
何かを言いかけて尊は口をつぐんだ。
「冷えるからお風呂入っておいで」
裸のままの尊に孝之は声をかけた。
けれど尊は動かなかった。
「尊?」
不思議に思って尊の顔を見て驚いた。
「たける?」
尊の頬に一筋の涙。
尊の前に孝之は座った。尊の涙をすくい取る。
「なんで泣くの……」
尊の瞳に孝之が映る。
「たかゆき……」
尊は孝之の名前を譫言のように呟く。
静かな涙を流して。
何度も何度も孝之の名を呟く。
孝之は尊を抱きしめた。
こんな尊を知らない。
この時初めて子供の尊に出会ったような気がした。
ことりと孝之の腕の中で尊は気を失った。
「尊、愛してるよ。尊が俺の事どう思っていようと……」
その時突然電話がなった。床に落ちている尊のズボンのほうから鳴っている。
尊は起きそうにない。
そっとベッドに寝かせて尊の携帯を開いた。
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