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寮に帰れば玄関先に大和と五月が出迎えていた。
「おかえりなさい」
大和が胸に飛び込んでくる。
「もう、怒ってない?」
「ああ」
返事を返すと大和は笑顔になった。
「約束したよな」
尊はそう言って大和にキスした。
「尊」
ぎゅっと大和の腕に力がこもる。
「もう言わないから嫌いにならないでね?」
「ならねぇよ」
「良かった」
大和の柔らかい髪に手をやってかき回す。
「尊」
更に擦り寄る大和を抱きしめ、尊は再び大和にキスを落とした。
「飯食いに行くぞ!」
五月が大和と尊を引き剥がした。
「行くぞ」
大和を引っ張って行く五月を見て尊は笑った。
後ろから2人を追う。
食堂は人であふれていた。
とりあえず席確保に向かう。
男子校の食堂は見渡す限り男ばかりだった。
「尊」
尊を呼ぶ声に振り返れば千早が手招きしていた。
千早が席の確保していたらしくすんなり座れた。
尊が通う高校は半寮制の男子校。家が遠い者は寮住まい。近い者は家からの通いだった。
尊や大和、五月などは寮住まいだが千早は通いの生徒だった。
「飯食って帰るのか?」
千早にたずねれば、たまにはねとの返事。
「体調は?」
「まあまあかな」
そっかと千早が尊に笑顔を向ける。
「何にしようかなー」
メニューを見ながら隣で悩んでいる。
「俺、オムライス」
大和が見ているメニューを覗き込み、目についたオムライスを口にした。
「唐揚げ定食にする」
と、千早。
「決めるの早いよ。五月、決った?」
「ロースかつ定食」
「えー、どれにしよ」
迷いに迷って大和はマグロ丼にした。
「チケット買ってくる」
「大和、いいよ。行くから」
千早が立ち上がる。
「え、僕行きますよ?」
「じゃあ、一緒に行こう」
「はーい」
大和が千早の後を追って行った。
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