心の欠片 | ナノ


▼ 9

寮に帰れば玄関先に大和と五月が出迎えていた。

「おかえりなさい」
大和が胸に飛び込んでくる。

「もう、怒ってない?」
「ああ」
返事を返すと大和は笑顔になった。

「約束したよな」
尊はそう言って大和にキスした。

「尊」
ぎゅっと大和の腕に力がこもる。

「もう言わないから嫌いにならないでね?」
「ならねぇよ」
「良かった」
大和の柔らかい髪に手をやってかき回す。

「尊」
更に擦り寄る大和を抱きしめ、尊は再び大和にキスを落とした。


「飯食いに行くぞ!」
五月が大和と尊を引き剥がした。

「行くぞ」
大和を引っ張って行く五月を見て尊は笑った。

後ろから2人を追う。


食堂は人であふれていた。
とりあえず席確保に向かう。

男子校の食堂は見渡す限り男ばかりだった。

「尊」
尊を呼ぶ声に振り返れば千早が手招きしていた。

千早が席の確保していたらしくすんなり座れた。


尊が通う高校は半寮制の男子校。家が遠い者は寮住まい。近い者は家からの通いだった。

尊や大和、五月などは寮住まいだが千早は通いの生徒だった。

「飯食って帰るのか?」
千早にたずねれば、たまにはねとの返事。

「体調は?」
「まあまあかな」
そっかと千早が尊に笑顔を向ける。

「何にしようかなー」
メニューを見ながら隣で悩んでいる。

「俺、オムライス」
大和が見ているメニューを覗き込み、目についたオムライスを口にした。

「唐揚げ定食にする」
と、千早。

「決めるの早いよ。五月、決った?」
「ロースかつ定食」
「えー、どれにしよ」

迷いに迷って大和はマグロ丼にした。

「チケット買ってくる」
「大和、いいよ。行くから」
千早が立ち上がる。

「え、僕行きますよ?」
「じゃあ、一緒に行こう」
「はーい」

大和が千早の後を追って行った。

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