最強男 番外編 | ナノ


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珍しく千里がリビングのソファーの上で居眠りしていた。

「寝せといてやれ。かなり疲れてるはずだ」
弾のその一言で千里を起こそうとした手を止めた。

まともにこの一週間、仁は千里と会話していなかった。

夜は仁が先に寝るし、起きるのは千里のほうが早い。
いつ寝てるんだろうと思うくらいだ。
けれど千里はどんなに遅く帰ろうが、朝が早かろうが仁の横で寝ているのは知っている。

仁を起こさないようにベッドに入ってくるのをいつも感じていたから。


千里の前髪に手を差し入れ上げる。ぱらぱらと髪が落ちる。千里の髪は柔らかい。

がっと仁の腕が払われる。千里の手だった。
「触るな」
千里が目を開ける。

「お前か」
仁を見て、千里の雰囲気が和らいだ。

「悪い。痛かったか?」
「ううん、大丈夫」
千里は人に触られるのを嫌う。それを仁は知らなかった。今まで普通に千里を触ってきたから。

仁は千里の中で特別だった。仁だけ。

「前髪、目にかかってたから」
「そろそろ髪、切りに行くかな。お前も伸びたな。近い内に一緒に行くか」
「そうだね」
仁は東雲に来て千里と髪を切りに行くのは初めてだ。

「千草、仁と一緒に予約入れといてくれ」
千草は、はいと返事をする。


そうして仁は鏡の前にいる。
隣には千里がいて。

鏡に映る自分と、仁の髪を切る美容師、タキ。

千里の髪を切っているのはこの店の店長の神楽。
千里と神楽は大学の時知り合ったらしい。

タキの鮮やかな手つきに、上手いんだなと思った。
彼が雑誌にも載った、この店のカリスマ店員だと後になって知った。


タキこと、瀧川蓮路と仁が親しくなるのもそう遠くない未来の話。
そして蓮路より拓海のほうと気が合い、拓海と仲が良くなり、蓮路の家に遊びに行く事になるのはまた別の話。


080626

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