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眠りネズミが僕に気付いて、あっと声を上げた。

「なに?」
その声にちょっとびっくりして眠りネズミに顔を向けた。

「本来の目的忘れてた。チェシャ猫が呼んでるよ、ワンコ」
「チェシャ猫が? わかった。ありがとう」
そう言ってキッチンを離れた。


ホールに戻って見渡すとモンとチェシャ猫がレジにいた。

「チェシャ猫」
小さな声でチェシャ猫を呼ぶとこっちに顔を向けた。

「五番カウンター。お前に客」
「客?」
「行って来いよ、ワンコ」
頷いてカウンターへ近付いて、その客が誰か気がついた。直也だ。

「直也」
直也が振り返る。

「お前、ワンコって呼ばれてるわけ?」
「うん」
「ふうん」
「直也、今仕事終わり?」
「まさか。今日は定時だった。店長に付き合わされて飲み屋の梯子。やっと解放されたのがさっき」
現在、午前二時だ。

「マジか」
「今から帰るんだけど、鍵どっかに落としたらしくてないんだ」
「落とした?」
「瑞希の貸して。あと、なんか一品持ってきて。あんまり食ってなくてさ」
「ん。適当に注文しとく」

キッチンに戻ってパスタを通した。

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