月と太陽 | ナノ


▼ 5.スグイとリーナカンジャ2

「やっ…エイゼン!」

パン、と乾いた音がした。
エイゼンの動きが止まった。エイゼンはネオンから離れ、椅子に座った。
エイゼンの頬が赤い。

「ごめん」
「初めてだな、お前が手を出したのって」
「ごめん」
「いい。いいんだ」
エイゼンが首を振る。

「……エイゼンにとって、スグイの国って何?」
「なんだろうな。スグイを出れば何か変わると思っていた。でも違う。変わらない。自分はスグイの人間だと思いしらされる」

右手を前に出し手のひらをネオンに見せる。
「スグイに金山はない。スグイを攻めるリーナカンジャはすぐこの事がわかるさ。スグイの金はこうして出来る」
ぐっと右手を握りしめ、ゆっくり開く。
ネオンは息を飲んだ。
エイゼンの右手には金の塊。

「だから、スグイの人間に気にいられなきゃ金を手にする事はできない。……スグイの秘密の一つだ」
「……」
「この機密事項をお前が知ってどうしようが俺はどうでもいい」
「言わない、誰にも。リーナカンジャが戦争を仕掛けるのはもう決定でどうする事も出来ない。
けれど、これがきっかけでスグイに金山がないと世界が知る戦にしたい」
「ああ」
「早く戦を終わらせる。スグイの美しい景色がなくなるなんて、いやだ」
エイゼンの部屋から見えるスグイの森を眺めながらネオンは呟いた。

「エイゼン、僕は前線に出る。ついてこい!」
ネエンはベッドの上から降りるとエイゼンに向かって言った。
「わかりました」


ベッドの中の主従関係から主と騎士の関係へ。

「急げ!宣戦隊がそろそろ出るはずだ」
ネオンはシーツを身体に纏うとエイゼンの部屋から出て行った。



「甘いな、ネエン。機密事項はまだあるんだ。でもそれを聞いても、それを利用することなんてないんだろうな」
楽しそうに笑って、エイゼンは立ち上がった。

スグイ。
エイゼンが育った国。
「クリス、再び俺はスグイの国に足を踏み入れる事になったよ」
ポツリと呟き、エイゼンも部屋を出た。




♪♪♪♪♪♪




「エイゼンが来る」
クリスはリーナカンジャの方角を見やった。
「来るか?」
ガーナにクリスは来るよ、と確信した目を向けた。
「じゃあ……遊んでやらないとな」
楽しそうにガーナは目を細めた。


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