最強男 | ナノ


▼ 3

「仁、煙草」
黙ってテーブルの上の煙草の箱とジッポを渡す。
ひったくるようにして仁から煙草を受け取ると、煙草を1本取出し火を付けた。

「そうだ、仁が初恋だ」
「いつ、出会ってた? 11年前?」
「11年たつか……。懐かしいな」
ふっと千里は煙草の煙を吐き出しながらうっすら笑った。

「なぁ、仁」
「ん?」
「2度はいわない。仁と会えた事に感謝してる」
「千里さん……」
「千里と呼ぶんじゃなかったのか?」
「ん……。やっぱり照れ臭い」
頬を赤く染め、仁は千里を見上げた。

「俺、千里さん……千里を知りたい」
「仁、仁しか知らない俺がいる事、覚えとけ。仁は知ってる。日立や棗が知ってる俺が仁の中にはない。けどな、仁しか知らない俺だって仁の中にいるんだ」
「うん、そうだね」
小さく仁は頷いた。

「……千里しか知らない俺って、どんな?」
「そうだな、捨て猫を見つけて里親を捜してた中3の仁とかな」
「なんで知って!」
「ずっと見てたからな、仁を」

千里がやさしい瞳で仁を見下ろしていた。

「……ずるいなぁ。知らないはずの俺を知ってて。俺は千里の事、ほとんど知らないのに」
「今から知っていけばいい。時間はいくらでもあるんだ」
「そうだけど」
「それに、さっきもいったが、仁しか知らない俺だっているんだ。俺だって仁から思い出話をしてもらったわけじゃないんだ。知らない事もまだまだあるだろう」
「そうかもしれない。千里の知らない俺を探してもらうのいいかもしれない」
楽しそうに仁は笑った。

灰皿に煙草を押しつけると仁は小さな声で聞いた。

「千歳って、千里の子だよね?」
千里はすっと目を細めた。

「違うの?」
「……千歳は、俺の子だ」
「なら、いいんだ。日立さんが変な事言うから」
「何て?」
「自分の子なら目を離さずみてるって」
「ふうん? ま、あいつの子でもあるかもな。日立や棗に世話になる事も多かった。千歳もお父さんが3人いるって喜んでるしな」
「そうなの?」
「多分、日立の部屋に千歳、行ってるんじゃないか? 一緒に寝るってな」

灰皿に置いていた煙草は吸われることなく灰になった。

千里は仁を引き寄せた。

「仁、キスしろよ」
そっと口付けすると千里の手が潜り込んでくる。

「千里さん!」
「さん付けやめるんだろ?」
「もう! 手!」
笑いながら千里は手を引っ込めた。

「寝る!」
大声で宣言してベッドに寝転がる。

「仁……」
仁の腰に腕を回し、抱きついてくる千里に素直に抱かれ、目を閉じた。

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