最強男 | ナノ


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「厚は、悪い奴じゃない。千明をあんな事したのは……」
「本当の理由は本人にしかわからん。……が、恋人が殺されたというのはあながち間違いじゃないと思ってる」
「そう」
「他にもありそうだがな」
それは仁も思った。

「千明、厚に何したんだ。友達に……。人なんか殺して……」
「ヤクザなんてそんなものさ。汚れていない奴なんていない」
「千里さん、も?」
「そうだな」
「そっか……」
「お前は汚れるなよ」
仁は頷いた。が、すぐに首を降った。

「多分千里さんになんかあったら、俺はヤクザに堕ちるよ」
「元刑事がか?」
「うん」
「仁は、俺にほだされただけかもしれない。本当の俺を知って、逃げ出すかもしれない」
「千里さん。俺は千里さんが好きだよ。じゃなければ、……身体開かないよ、男が男に、さ」
千里は、そうだなと頷いた。


「仁さん、私がいるの、忘れてませんか?」
申し訳なさそうに千草が千歳の耳に掌を当て、立っていた。

「え? あ、すっすみません」
カッと頬を赤くして助けを求めるように千里を見た。

「仁さん、千里をよろしくお願いしますね。きっとつらい事や受け入れがたい事が出てくるでしょうけど、千里を信じてやって下さい」
「……はい」
にこりと笑うと、先に帰ってますと千歳を連れて千草は出ていった。


「えっと……」
「仁」
千里に目を向けると千里は言った。

「もし、お前が俺を嫌いになろうが、手放す気はないからな。そうなったら、本当に監禁でもしてやるよ」
「もしもなんてない。千里さん、どうして逃がす気ないとか手放す気ないとか言うの? 俺はどこにも行かない」
千里は11年、仁に片想いをしていた。仁はそれを知らない。ようやく仁を手に入れたのだ。

千里が仁を見たのは千里が高校生の時だ。

ずっと欲していた、仁を。

「11年だ」
「え……」
「仁に片想いしていた。11年だ」
「え、ええっ?」
「だから、離したくないんだ」
千里の腕が仁を抱き上げる。

仁は気付いた。千里の耳がほんのり赤くなっているのを。

「千里さん、顔見せて」
けれど千里の腕の力が強まっただけだった。

こんな千里さん初めてだ、仁は心の中で思う。
照れている顔をみたいけれど、諦めて仁は千里の首に腕を回した。

「大好き」
千里の耳に囁いた。

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