最強男 | ナノ


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雨が降っていた。
雨が草木に当たりぱらぱらと音がする。

「日下」
「はい?」
「何かしゃべれよ」
「何しゃべるんですか」
「なんでも」
仁は今、コンビを組む先輩刑事と現場待機をしていた。

ある建物を中心にぐるっと私服の刑事が張り込んでいる。
仁は時計を見た。計画では30分後午後9時に一斉捜査。

「お前、兄弟いるの?」
「いますよ、妹が」
「美人?」
「美人っていうか、かわいいですよ。センパイは?」
「いるよー。兄貴が二人」
「千早先輩、三男ですか? みえないですね、長男っぽい」
「見えない? そ? でもオレ、甘やかされて育ったぜ? ワガママだし」
「……自覚はあったんですね、センパイ」
そう言うと千早は笑った。
「末っ子だかんねー。ワガママなのはオレのせいじゃない! 悪いのは親! んで、兄貴!」
けらけら笑う先輩。
つられて仁も笑う。


交番勤務1年やって、ようやく念願の私服刑事になれたのが約2ヶ月前。

二人一組で動く刑事。
仁には二つ年上の千早センパイが相棒となった。

「そういえば先輩って名前なんて言うんですか?」
「へ?」
「名前」
他の先輩達は千早を『千早』とか、『ちー』とか呼んでいるが、下の名前は聞いたことがなかった。
「お前、サイコー」
腹を抱えて笑われた。
「チハヤ。それが名前。みんな名前で呼んでたの。そっかー聞いてないのか、オレのコト」
「何を?」
「聞いてないなら聞く事ない。お前はピュアなままでいろ」
にこっと微笑まれ、ドキッとする。

千早センパイは、普段はワガママで口が悪い。
それでも人望があついのか彼の周りには人がいた。
時々みせるかわいい笑顔。でも誰も口に出してかわいいなんて言わない。
センパイは手も足も早いからだ。

「そういや妹、いくつ?」
「3つです」
「3つ? 3歳?」
「はい」
「あ、そう」
「センパイ、年頃なら紹介してとか言うつもりだったでしょ?」
「ばれたか。すんげー年離れてんだな。お前の隠し子だったり?」
「まさか。正真正銘の妹です。弟もいますよ、これは高校生ですが」
「ははっ、男は興味ないなー俺。女子高生ならよかったんだけどー」
そんな他愛もない話で盛り上がっていた。そんな中、無線が音をたてた。


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