最強男 | ナノ


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そこまで言われると疑う気にはならない。

「あら、そういえば千歳は?」
「部屋にいるか蓮池のところだろ」
「そう。顔を見て帰るわ。あら、千草」
廊下を歩く千草に気付いて春灯は声を上げる。

「母さん、来てたんですか」
縁側に寄り立ち止まる千草に春灯は手招きした。
千早が庭に降りてくる。

「ここに千早もいれば良かったけれど言っておくわ。特に千里に。千鷹からの伝言よ。千鷹も先代から言われたのよ」
千里が母の顔をみる。

「東雲組を潰せって」
「潰せ……? どういう意味で、それは……」
眉を寄せ千草が聞き返す。

「東雲組は大きい。やるならつぶす覚悟でやりなさいってこと。……そうそう潰せないじゃない、だから失敗すると思う事はしないように計画をたてて、成功しなさいってこと。反対に潰していいよって言われて潰せる? 潰せやしないわ」
「……潰してやろうじゃないか」
千里はそう言うと屋敷の中に入った。


「大丈夫かな、千里」
「あら、千草はわからない? あれがちさの覚悟よ。それだけ仁の事、本気なのよ。大丈夫。仁は無事帰ってくるわ。あの子、あの目、本気だもの。久遠寺も大きいし、覚悟がなきゃ久遠寺組と相打ちで終わるわ。勝たなきゃならないのよ、仁のために。組のために。ちさにはいい幹部がいる。仁奪還には力を貸す人たちばかりよ。もうそろそろ久遠寺の抗争は終わらせちゃいたい」
「ええ」
そうですね、千草は相槌をうつ。

「千草、私千歳の顔を見て帰るわ。千里が待ってるわよ」
「ですね。気をつけて帰って下さいね」
「ありがと」
春灯は手を振った。振り返して千草は急いだ。

今、仁がいない。だから再び千草は千里の補佐にまわっていた。

リビングで千里は千草を待っていた。

「千草、羽柴さんのところに行くぞ」
「羽柴さんのところって……」
羽柴僚。千鷹の学生時代の同級生で弁護士をしている。東雲組の顧問弁護士をしている。

「法に触れる事は出来ない、今回は。正攻法でいこう。訴えられてまずいのは向こうだ。久遠寺組とケリつける」
「はい」
「羽柴さんを交えて計画を練ろう。明日臨時の幹部会開くぞ。……いや、早いほうがいい。夜に」
「わかりました」
夜には幹部が集まってくるだろう。

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