▼ 6
敷いた布団に御堂が横になる。
「ふっかふか」
ふかふかした布団に満足気だ。
「昼には起こすからな」
「おう。ちーちゃん、起こしに来てよ」
「了解」
「やった」
御堂は本当に眠かったのかすぐ眠りについた。
目を瞑ってしまえば幼い顔がある。仁の顔とだぶる。仁も眠っているときは無防備で幼い。
千里はそっと廊下に出て襖を閉めた。
「千里、くふりが来てるよ」
千草の声に手で合図する。すぐ行くと。
日立くふりは千里を見るなり言った。
「御堂で良かったのか」
「ああ。千咲のお達しだ」
「そうなのか」
納得したように頷くと日立はソファーに座った。
「仁の事なんだけど、日立の情報網に何もかからない。都内を出てないかもしれない」
「これから出る可能性はあるな」
「久遠寺は関東のあちこちに拠点を置いてるからな。その可能性は高いだろうな」
日立の言葉に千里は考える。
「なぁ、千里」
「何だ」
「小耳に挟んだんだけどさ。雲雀が妙な動きしてるってな」
「雲雀……」
千里は義兄の顔を思い浮かべた。
「なるほど、これに一枚噛んでるのは雲雀か」
「あん?」
「最近妙にこそこそしてたんだよ。余所の組の下っ端を見たって奴もいる。それが多分、久遠寺の奴らだろう」
「じゃ、仁がいる場所はわかったも同然だ。今、東雲のビルだろ」
東雲組が昔買い取ったビルがある。そこを管理しているのは雲雀だ。そしてそのビルはの七階フロアが雲雀の拠点、ねぐらになっている。
「味方のところには組員は仁を捜しには行かない。……見つからないはずだ。日立、雲雀をマークしろ。あそこを出入りする奴らもだ」
「了解」
「監視カメラもチェックしろ。雲雀に気付かれるな」
「わかった。カメラは千明にでも頼むわ」
「任せる」
日立が出て行った後、千里はガラス戸を開けて庭に出た。
待ってろ、仁。
そう囁く。
仁はこの手で守る。
千里は掌を閉じグッと手を握った。
「ちさ」
後ろから声がかかる。
千里をちさと呼ぶのは1人だけだ。
「春灯」
「久し振りね」
廊下の柱に寄りかかり千里を見ていた女性。母親だった。
「一つ渡したいものがあって来たのよ」
「何?」
「渡すときが来たと思ってね」
受け取ったのは封筒だった。
「仁ていったっけ。あの子を捜してるんでしょ。何かの手がかりになればいいわね」
封を切って中を見れば、仁の身元調査書だった。
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