最強男 | ナノ


▼ 18

「ハチさん、千鷹さんの写真とかあります?」
「別宅行きゃあ、ある。見たい? 顔」
仁は頷いた。

朱里は財布を取り出して一枚何か取り出した。
古い一葉の写真。

「俺がまだ8歳位か」
家族写真。前のほうに子供達、後ろに大人がいる。大人の中の中心に千鷹はいた。

すぐにわかった。すぐ右隣に時雨がいる。

「ああ、確かに似てる。すぐに親子だとわかる」
「この写真、当時の三家が綺麗に揃ってんだ」
「……これは誰?」
千鷹の左隣を指差す。

「要さん。棗の親父」
写真を指差し1人1人誰か教えてくれる。

千早がいて千里がいて千草がいて。

「この子は?」
「甲斐。千早と同じ年だな。今ニューヨークの空の下。腹違いの弟。唯一、俺らの母親に可愛がられた」
「その後ろの女の人は?」
「それが母親」
「この人が春灯さん?」
とても凛とした、人。仁はそんな印象を受けた。大和撫子、そんな言葉がするりと当てはまる人。

「千里とハチさんて、千鷹さんのいくつの時の子ですか?」
「親父が18の時、千草兄が生まれてる。だから、ハタチん時の子か」
「写真の時8歳って事は、千鷹さん28。今の千里とあんまり変わらないのか。千鷹さんがもっと大きく写ってるのないの?」
「んなもんわざわざ持ち歩くか。これだけだな、今持ってるのは。この写真以降だな、親父とちさっちゃんの仲がこじれたのは」
「ハチさんはなんでこの写真、持ち歩いてるんですか?」
その質問に朱里は頭をかいて下を向いた。

「言うなよ。……家族が好きだから。俺が一番家族に執着してんの」
悲し気に朱里が言う。
子供の頃、東雲の子でありながら蜂谷として育った朱里。

「でもな、蜂谷朱里としての自分も嫌いじゃねーんだ」
「ハチさん……」
「隙あり」
朱里の手が伸びてきたと思ったとたん髪に手が入り、引き寄せられ唇にキスされていた。

離れようとしたが思っていたより朱里の逃がさないようにした手の力は強かった。

するりと入り込む朱里の舌。
仁の舌を絡め取って吸われる。

「……ふっ」
イヤ、じゃなかった。

仁の口腔を堪能した舌は入ってきた時同様するりと出て行った。
つい名残惜し気に見送った。それを見てくすりと朱里は笑った。

「ちさっちゃんには内緒な」
いたずらっ子のような瞳に仁はどきりとした。


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