相惚れ自惚れ片惚れ岡惚れ


※謙→ユ←白、千、財
超腐向け。
お気をつけください!











「なぁ謙也」

「おん?なんや、ユウジ?」

「あんな謙也っ。俺なっ。謙也のこと大好きやねんっ」

ユウジは少し俯き頬をぽっと赤く染めて俺に言った。付き合いはじめてから何回同じセリフ聞いたやろう。きっとこれがただ流れで付き合うてしもた女子やったら3日で飽きてしもうてたんやろうな。何てたって俺は浪花のスピードスターやから。
ユウジやから。ユウジが言ってくれるからこのセリフは飽きることが無いんやろう。いや。絶対飽きることなんか、ない。

「俺も愛しとるよ。ユウジ」

ユウジの耳元で囁いてやるとみるみるうちに全身が熱くなってくんが分かるぐらいユウジは真っ赤になる。この一言でゆでダコがあっちゅー間に完成や。

「ほ…ほんま?」

上目遣いで俺に尋ねるユウジ。
それに最っ高な笑顔で答える俺。

「うん。ほんま」

ほんまに愛しとる。俺のユウジ。絶対誰にも渡さへん。ユウジだって、俺のこと大好きやろ?愛しとるやろ?だって俺らは相思相愛やもんな。愛し合っとるもんな。大好きな俺のユウジ。
俺がどんな奴からも、絶対守ったるからな。













「なぁユウジ…。なんで俺じゃ、あかんの?」

「…」

「あんな奴よりも俺の方がずっとユウジのことを幸せにできる。っちゅーかしてみせる。やから、な?…ユウジ」

「…しら…い…し…」

部室の隅っこで、俺はユウジに問いかける。問いかけるっちゅーより、説得するのが妥当かな?だって、ありえへん。俺の方が謙也よりユウジのことをずっとずっと愛しとんのに、謙也よりずっとずっとユウジを見とった期間は長いのに、なんでユウジは俺を選ばんのか。なんで、どうして。もう何回この質問をしたかはわからへんぐらいユウジにした。

「も…やめ…て…」

一粒、ユウジの目から涙が流れた。
俺はそれに見とれて、あぁなんて綺麗なんやろう。って心ん中でずっと思ってた。見てみぃ謙也。俺はお前が見れん物を今見とるんやで。やっぱりユウジは俺ん物なんや。
ユウジは、俺のことを――。

「何しとるん…!」

「っ…!謙也…謙也…!!」

部室の扉んとこには謙也が目ぇ見開いて立ってて、それにユウジが磁石のN極とS極みたいに引き寄せられるようにして駆け寄った。

「ユウジ…。俺な?ユウジんこと、大好きやねん。謙也よりずっと大好きやねん。謙也よりずっと幸せにしたる。俺なら、できる。だから。ユウジッ」

「やめろや白石!ユウジは俺と付き合おうとるんや!今まではユウジに振られてきてたからちょい可哀想思うてなんも言わんかったけど…。お前…未練がましいにも程があるわ!!」

可哀想?
俺が、可哀想――?
振られてきた?
俺が、ユウジに――?

「自惚れんのも、大概にしろや!!」

部室内には、謙也が唾液を飲む音と、ユウジの泣き声が響き渡った。
あかんよユウジ。
そんなに泣いてしもたらさっきの涙が、俺の物と、無くなってまうやんか――。














「聞いてくれる?千歳」

「どげんとしたと?ユウジくん」

ユウジくんは謙也くんと付き合うてて、すっごい上手くいっとるらしい。俺の役目は、ユウジくんから謙也と何をした、何を喋った昨日のデートはこうだったなど、いわゆるのろけを聞くこと。
好きな人からのろけを聞くんは、息が詰まりそうになる。
けど、ユウジくんと少しでも一緒におりたいから、ユウジくんと少しでも喋っとりたいから、俺はそんなのも我慢する。

「そんでなっ。謙也がな…」

「うんうん。ハハッ。謙也くん…馬鹿たいねぇ」

「やろ!?やろ!?んでな…」

なんて楽しそうに、幸せそうに話すんやろう。なんて可愛い、綺麗な顔して笑うんやろう。こんなユウジくんを一人占めしとる謙也くんが、憎い。憎くて、憎くて、憎くて。何回も殴りたくなる衝動を、俺は抑える。
だって、今殴ったってユウジくんは俺の物にはならん。そんな分かりきっとることを、俺はしやん。この笑顔が見られるだけで俺はいいんや。この笑顔が見られるだけで俺は幸せなんや。
惚れた時から気付いてた。叶うはずが無いと。だから、俺は大丈夫。ユウジくんが傷ついてたら俺が陰ながら支えたったらええ。そんな関係で、俺らはええんな。
それが俺の、片想いなんやから。















ねぇ、ユウジさん。俺、ユウジさんのことすっごい好きなんすわ。もう好きで好きで、しゃーないんすわ。あんたはきっと、謙也さんのことで頭いっぱいやから気付く訳がないんやろうけど。まぁ気付いてほしいとか、全く俺は思わんけど。部長みたいに惨めなんにはなりたないし、千歳先輩みたいにバリバリ態度で分かるんにもなりたない。


「あ、なぁ光。謙也知らん?」

「屋上行くの、見ましたよ」

「ほんま!?おおきにな、光!!」


光、光、あんたが俺の名前を呼ぶだけで、あんたのそのごっつ可愛い笑顔が見れるだけで、俺はむっちゃ幸せ。
絶対、こんな幸せ誰にも邪魔されたくない。絶対、邪魔なんかさせへん。この小さい幸せは、俺だけの物や。ユウジさん、幸せになってくれんと、俺本気で怒りますよ?あんたが笑っとらんと、俺どうしたらええかわからんのっすわ。
むっちゃ、好き。
好きで好きで、もうほんまどうしたらええんかって考えたことがある。でも、これでええんや。ただあんたが、俺が好きなあんたが、幸せになってくれることが俺の幸せっちゅー話っすわ。




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相惚れ自惚れ片惚れ岡惚れ
(あいぼれうぬぼれかたぼれおかぼれ)
→人が人を好きになるにはいろいろな形があるということ。
相思相愛の相惚れ、ひとりよがりの自惚れ、片想いの片惚れ、ひそかにあこがれる岡惚れと、人を好きになることばをおもしろおかしく並べたもの。






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